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掲載開始日:2026年4月20日更新日:2026年7月20日
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令和8年度 市長コラム「手をつなぐ樹」(第482号から第489号)

コラム一覧
- 第489号 ありがとうございました(令和8年7月20日号)
- 第488号 幸運に恵まれて(令和8年7月5日号)
- 第487号 つまづきながらも(令和8年6月20日号)
- 第486号 大正時代(令和8年6月5日号)
- 第485号 多摩の地ですくすくと(令和8年5月20日号)
- 第484号 新秩序に求められるもの(令和8年5月5日号)
- 第483号 実り多き日々を(令和8年4月20日号)
- 第482号 新広場に思う(令和8年4月5日号)
第489号 ありがとうございました
選挙期間中、仙川駅の近くで一休みしているときに若い女性が私の前で立ち止まり、いきなり「立候補していただき有難うございます」とおっしゃいました。24年前の、私にとって初めての選挙のときです。そのことを時折思い起こしては、一面識もない方からのあの言葉は、一体どのような思いにもとづくものだったのだろうと考えることがあります。
市政を担当させていただくには、あのときの思いがけぬ激励のような、一人ひとりの市民の方が素朴かつ真摯に抱いておられる市政に対する思いを把握することが必須となります。その当たり前のことを心掛けつつ、完全無所属を貫きながらいつしか24年が経過しました。その間、初選挙時にまったく無名の人間を2万6517人もの方が支持して下さったありがたさを忘れたことはありません。
そして、これだけははっきりと申し上げたく存じます。私は、調布市が誕生してから70年余が経過する中で、まちの様相が明るく一変する大転換期に行政を担わせていただいた幸運をしみじみと噛み締めております。人生における社会への貢献において、私としては本懐を遂げさせていただきました。すべての方に心から感謝申し上げます。
去る者日々に疎(うと)しが世の常であることをもとより承知した上で、最後につたない真情の吐露をお許し下さい。
「こののち、一陣の涼風が吹き抜けたと感じていただく市民の方が一人でもおられれば、それだけでもう私は十分です」。
24年間、本当にありがとうございました。
(註)平成14年から連載した本コラムは、私費でとりまとめ小冊子として刊行予定です。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和8年7月20日号掲載)
第488号 幸運に恵まれて
以前、NHKの方に言われた。「調布市のように、数年以内に大河ドラマと朝の連続テレビ小説両方の舞台となったまちは、ほかにありませんよ(註1)」。
そうだとすれば、なんと幸運だったことだろう。両ドラマ放映の反響および効果は絶大なものであり、それによって初めて調布を訪れた方が相当数にのぼったことは疑いない。
また、その「ゲゲゲの女房」に描かれた水木しげる氏が、漫画家として2人目の文化功労者に選出され、その後「ゲゲゲの~」が新語・流行語大賞を獲得したことも大きな話題となった。
さらに、文化面の大ニュースとしては、深大寺の白鳳仏が関東に現存する最古の国宝として国の認定を受けた。
目をスポーツに転じれば、味の素スタジアムおよび武蔵野の森総合スポーツプラザ(註2)において、多摩地域初の国体やラグビーワールド杯、オリンピック、パラリンピックが開催された。ちなみにそれら国際3大会すべての会場となったのは全国で調布市のみだった。
とにかくこの24年間、多くの大きな明るい話題につつまれたわがまち。夢のような笑顔の日々が思い起こされる。
その間にまちづくりも進展し、その象徴ともいうべき調布駅前広場が今年完成した。京王線の地下化計画が決定した年に市長となり、調布駅前広場の完成を見届けて退任する。国交省の関係者から、「調布駅前の空間は日本中にあまり例を見ない」と言っていただいた。有難いことだ。
(註1)両ドラマの放映年:NHK大河ドラマ「新選組!」2004年、NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」2010年。
(註2)2025年5月からネーミングライツで「京王アリーナTOKYO」として新たにスタート。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和8年7月5日号掲載)
第487号 つまづきながらも
学業後の半世紀に及ぶ社会生活を終えるにあたり、これまでの人生におけるさまざまな出来事が走馬灯のように脳裏に去来して、しばし感慨に耽りがちな日々だ。
記憶とは所詮おぼつかないものだが、幼少期のおぼろげな一コマが脈絡もなく心に浮かぶとき、自然に胸が熱くなるのはなぜだろう。澄みきった青空や茜雲のもとでの折々の営みや交友を結んだ人々の面影。それが今となっては必ずしも明確なものではないから、なおさら追憶に郷愁を感じるのだろうか。
そして、その郷愁の念とは何だろう。私にとってそれはしばしば、深い悩みに沈んだときの心の拠り所だった。辛いとき、悲しいとき、人生の中で進むべき道を見失い途方に暮れるとき、人は無意識に自らの人生航路を振り返るのではないだろうか。そのとき、世の中の不条理にまみれる前の純粋な時代を思い起こすことにより、心の安寧を再び持ち得ることもある。
漱石は著書草枕において、「とかくに人の世は住みにくい」と人生観に関して問題提起している。確かに、浮世を渡ることは容易ではない。それは決して自己を取り巻く環境にのみ問題があるわけではなく、自らに責任があるときも含めて。
その中で、つまずきながらもなんとかここまでやってきた。遡って考えるとき、長い社会生活を通して常に周囲に温かく接してくれる人々がいてくれた。その幸運をしみじみと感じている。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和8年6月20日号掲載)
第486号 大正時代
どこの国においても、前後に比較して極めて気の毒な世代(約30年)が稀にあると言われる。明治以降のわが国においてそれは、大正時代およびその前後に生まれた方の世代ではないだろうか。
私の両親はともに大正生まれだが、二人とも生前、時折人生を振り返って、「自分たちには青春がなかった」と慨嘆していた。父は、宮崎のさほど豊かでない農家に生まれ、その父親(私にとっては祖父)が10歳のときに病死したために、義務教育もそこそこに一家を養うために働きに出なければならなかった。その後、20代で応召し満州で終戦を迎えたものの侵攻したソ連軍の捕虜となり、シベリアで過酷な強制労働と悲惨な収容所生活を強いられた。かたや母は、宮城県仙台市で生まれ育ち、10代後半の戦時中は毎日勤労動員に駆り出され、娯楽色が皆無の耐乏生活の中、飛来する米軍機による空襲を受け命からがら逃げ惑ったと述懐していた。
無論、私の親だけが貧しくかつ苦労したわけではない。その当時の全国民が等しく大変困難な環境に身を置き、特に大正生まれの男性はなんと7人に1人が戦死したとされる(註)。
この歳になって何かの拍子にふと両親を思い起こすとき、艱難辛苦に耐えて国を繁栄に導いていただいた、親と同世代のすべての方々に対する心からの感謝の念が沸々と湧いてくる。
(註)大正生まれの男性数、約1348万人。戦死者数200万人以上。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和8年6月5日号掲載)
第485号 多摩の地ですくすくと
5月10日早朝から多摩川河川敷の児童公園少年野球場で、第56回調布市学童軟式野球大会夏季大会の開会式が挙行された。毎回のことながら、多くの小学生が元気に参加してくれることを本当に嬉しく思うとともに、少年野球連盟を始めとする多くの方々のご尽力に改めて感謝申し上げたい。本当に有難うございます。
私も今を去る60年以上前に、団地対抗の小学生野球チームに所属していたが、上級生が大股で行進する際には末尾の自分などはいつも小走りにならざるを得なかったなと苦笑交じりに思い起こしたりしている。
開会式を終えた足で市役所前広場に移動して、次は「調布親子フェス」に参加した。これは、市が主催する「児童青少年フェスティバル」と各地域の皆様が企画される「調布親子まつり」を束ねた名称で、「こどもまんなかのまち!ちょうふ」のスローガンのもとに盛りだくさんの催しが用意され、子ども同士の交流や親子のふれあい、さらには地域を越えた交流の機会となることを企図するイベントだ。
朗らかに微笑み、活発に駆け回る子どもたちの元気な姿を見るだけで、癒され活力を与えてもらう気がする。都心に比べればまだ恵まれた自然の残る多摩地域で今後とも彼らを温かく育む環境づくりに全力で取り組んでいきたい。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和8年5月20日号掲載)
第484号 新秩序に求められるもの
毎日のできごと、就中、昨今の国際情勢の報道に接するときに、名状しがたい違和感、あるいはそれ以上の嫌悪感を覚えるのはなぜだろう。
生来、人間の行為、感情の発露は決して性善説だけで説明できるものではなく、そこに、時として邪悪な側面も存在しうることは誰しもが理解するところだ。ただ、だからと言って、トランプ氏ほどあからさまに、人間の持つ誠実さや謙虚さのかけらも感じさせない妄言をこれでもかと連発されては、さすがに辟易してしまう。ニューヨークで多少の成功を収めた不動産業者にとっては、所詮人間の行動のすべてはディール(取引)上の駆け引きでしかないのだろうが。だが、そのような思い込みにもとづく、さも80億人の生殺与奪権をわが手に掌握していると言わんばかりの傍若無人な振る舞いを前にして、善良で無力な一市民は沈黙のまま長嘆息するしか術がないとすればなんと嘆かわしいことか。
本年1月のダボス会議(註)におけるカナダのカーニー首相の演説は世界中に感動を与えた。彼は大国の専横を許さないためにはミドルパワー(中堅国家)の強固な連携が必要だと説いた。「強者には強者の力がある。しかし、私たちにも力がある。真の協力の世界から最も大きな利益を得る。それがミドルパワーの使命だ」と訴える。
平和裏に世界全体の利害調整を可能にする新国際秩序が早期に形成されることを期待したい。そして、それが可能な限り寛容性を伴ったものであってほしいと願うのだが。
(註)正式名称、「世界経済フォーラム年次総会」。地球規模の課題解決や経済、技術、環境問題などを討議するために世界中の政界、経済界、学術界のリーダーが集う権威ある国際会議。1971年に発足し、毎年1回、スイスのダボスで開催される。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和8年5月5日号掲載)
第483号 実り多き日々を
春4月、それぞれのスタート。
小学校の入学式。まことに可愛く微笑ましい。「ご入学おめでとうございます」と言うと、大合唱のように、「ありがとうございます」と応じてくれた。見事に声をそろえて。事前に練習したのだろうか。思わずこちらの頬も緩みがちになりながら、早く学校に馴染んでくれるようにと願うばかり。
中学1年生の表情には多少の緊張が見て取れた。あらゆる場面で自立を求められる今後の展開を予期して、期待と不安が交錯しているのだろう。ただ、彼らは小学校時代に遭遇したコロナ禍の渦中で、自らを律して辛い時期を乗り越えた経験を持つ。そのことを一つの自信として、今後難題が発生した際にも負けずに立ち向かってもらいたい。
大学の新入生は、騒然とする国際情勢下での入学となる。人類は今後の国際社会をどう構築していくべきか。その大命題に取り組むためには、複眼的思考を深めてもらいたい。政治、経済、文化、その他あらゆる観点からの分析なくして複雑に絡み合う国際関係を読み解くことはできない。
また現時点は、人類が人工知能を広範な用途に使いこなし始めたスタートラインとも言える。人類の進歩のために、彼らがそれを賢明に活用することを期待する。ただ同時に、未来永劫AIが完全には代替できない人情の機微などの人間固有の感性を磨くことにも積極的に取り組んでもらいたいと思う。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和8年4月20日号掲載)
第482号 新広場に思う
長年にわたる工事の継続により市民の皆様に多大なるご不便をおかけした調布駅前広場が、先月ようやく完成した。調布市の表玄関とも言える新広場の誕生により多くの市民の方が新たな憩いや安らぎを得られることを切望するとともに、イベント開催時等に増加するであろう市外からの来訪者により、得がたい経済効果が生じることに期待を寄せたい。また、同じく3月には都市計画道路3・4・28号線(註)も開通した。
それにしても、予算その他の事情にもよるが、まちづくりの案件によっては極めて長い歳月を必要とするものだ。今回、そのことを改めて痛感している。調布駅前広場については、地下化による京王線の連続立体交差化の決定から24年。地下化切り替えから14年。他方、都市計画道路に至っては、驚くことに計画決定時から現在までにすでに64年が経過している。
その間、継続的な国や東京都による支援、また市議会や市民のご理解があってここまでたどり着くことができた。これらの事業達成により、今後市民生活にもたらされる利便性の向上や潤いの創出を多くの方に実感して頂ければ嬉しい限りだ。
満開の桜を眺めながら、新たなスタートに際して、今年度のまちづくりに思いを馳せている。
(註1)調布3・4・28号線(品川道天神前線)は、調布駅の東側に位置し、品川通りから甲州街道までの南北方向を通る幹線道路。
調布市長 長友貴樹
(市報ちょうふ 令和8年4月5日号掲載)