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ページ番号:3515

掲載開始日:2016年3月5日更新日:2016年3月5日

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平成27年度 市長コラム「手をつなぐ樹」(第254号から第273号まで)

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コラム一覧

第273号 また穏やかな日々を

 先日、テレビで10日間にわたり、ベルギーを周遊して各都市を紹介する旅番組が放映されていた。30年ほど前になるが、同国には仕事で4年近く住んだこともあり、大変懐かしくそれぞれの街並みを拝見した。
 ベルギーは、歴史的経緯により民族、言語(註)が混在する国ではあるが、連邦制のもとに一応の統一は保たれている。そして、国民性は温和で異文化を受け入れる寛容性も持ち合わせている。日本人が居住しても外国人としての疎外感を感じることはほとんどない。また、パリやロンドンなどの大都市と比べても、はるかに安全に暮らすことができる。在住時にも、こそ泥や車上荒らしなどは多少あったものの、総じて日本並みの良好な治安状況であった。
 しかるに、昨年のパリにおける同時多発テロの発生以来、一部に、あたかもベルギーがイスラム過激派の巣窟(そうくつ)のごとき印象を与えかねない報道が見られることは誠に残念だ。アラブおよびアフリカ系の移民が多く居住する地域の存在は、決してベルギーだけの特殊事情ではない。
 あの美しく心温かな小国に、一日も早くまた穏やかな日々が戻ることを心から願っている。
 また、今後ラグビーW杯やオリンピック・パラリンピックを開催する日本にとっても、テロ対策の強化は他人事ではない。

調布市長 長友貴樹

(註)ベルギーの公用語は3つ。東端の一部ドイツ語地域を除けば、大雑把に言って、北がオランダ語で南がフランス語地域。

(市報ちょうふ 平成28年3月5日号掲載)

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第272号 キャラクターは永遠に

 先月末、昨年11月30日に逝去された水木しげるさんのお別れ会が挙行され、出席させていただいた。
 午前、午後合わせて全国から約8,000人もの参列者があったと聞いて、改めて水木ワールドのファンがあまねく日本中におられることを痛感した。水木さんの作品は永遠に人々に愛されていくことだろう。
 調布市としても、ご逝去直後に、文化・コミュニティ振興財団と話し合って、文化会館たづくりに献花台を設けたが、そこにも27日間に3,263人もの方が記帳に訪れるとともに、多くの花が手向けられた。
 ゲゲゲの鬼太郎や、河童の三平など多くの人に親しまれてきたキャラクターが、今後も国民的アイドルとして人々の胸に生き続けることは間違いない。素朴な日常生活に溶け込んだ民話の世界から抜け出てきたような主人公が活躍する水木さんの著作に触れる時、人々は等しく心の安らぎを覚えるのだろう。
 また、そのような著作物とともに、水木さんの恒久平和に対する強い思いも高く評価されなければならない。
 市としても当然、未来永劫、水木さんの功績を伝え続けていく所存だ。そのために、市立図書館における水木コーナーの一層の充実などに取り組んでいく予定としている。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成28年2月20日号掲載)

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第271号 最後まで全力で

 十代の後半、私は鬱(うつ)々とした日々を送っていた。受験に失敗して入学した第2志望校になじめず、成績がじり貧のまま、結局その学校にも居づらくなり、高2の3学期という中途半端な時期に大阪から東京への転校を余儀なくされた。しかし、環境が変わっても自堕落、無気力な日々は変わらず、大学合格など夢物語のような絶望的な状況のまま、時間だけが徒(いたずら)に過ぎ去っていた。
 高3の夏のある日のことだった。夕暮れ時に近所の公園から盆踊りの民謡が聞こえてきた。思わず誘われるように足を向け、櫓(やぐら)から少し距離を置いてぼんやりと祭りを眺めていた。「月が出た出た月が出た」。何の変哲もない炭坑節のメロディーが、ささくれ立った心に深く沁(し)みた。なんでこんな情けないことになったんだろう。親に指摘されれば口答えするが、本当に申し訳ない。涙がとめどもなく流れる。
 遠く過ぎさった日々だが、時折思いだす。
 受験生諸君、どうか悔いのないように全力を尽くして下さい。あまり結果を気にせずに。たとえ今回うまくいかなくても、きっとまた、あなたにふさわしい目標が見つかるよ。風邪をひかないように気をつけて、さあ、自信を持って行ってらっしゃい。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成28年2月5日号掲載)

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第270号 消去されないままに

 去年の秋ごろだっただろうか。それ以前から携帯の電話番号記憶容量が飽和状態になり、新たな登録ができにくくなっていたので、時間を見つけてすでに使用しなくなっていた番号を一斉に消去しようとした。
 数年ぶりの大掃除なので存外多くの番号を消すことになったが、その際、それぞれの番号の向こうに所有者の顔が浮かんできて、しばし作業が中断してしまう。あたかも、家を掃除するとき、出てきた古新聞をつい読んでしまうように。
 そして、ア行から始めてナ行に差し掛かった時に思わずはっとした。それは、その前年に他界した父の携帯番号だったからだ。やはり改めて寂寥感(せきりょうかん)を覚えるものだ。まして、私は長男だというのに、父が亡くなる前後はこの上なく多忙を極め、実は、葬儀をも欠席してしまった。とんでもない親不孝に関して未だに自責の念にさいなまれる。
 そして、今一つ淋しく思うのは、縁遠くなった宮崎県との関係だ。父が退職後30年間の生活拠点を故郷宮崎に定めたために、私は、自分自身が住んだ経験は無いものの、毎年その地を訪れてきた。そのたびに、温暖な気候と温かい宮崎県人の人情に心癒される思いがしたものだ。
 多くの方の長年のご厚情に深く感謝しつつ、良き思い出をいつまでも大切にしていきたい。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成28年1月20日号掲載)

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第269号 目は一生の財産

 前にも触れたが、わが国のみならず、今世紀に入る頃からの携帯電話の飛躍的な普及には今さらながらに驚かされる。
 便利な道具であることは論をまたない。しかし、かくも短期間に、この小型軽量なる直方体により、あらゆる場面での日常生活がときに制約を受け、逆に不便さを感じるまでになることが、開発時点においてどこまで予想されていたのだろうか。それは使う側の問題だと言ってしまえばそれまでだが、一日中携帯を扱い続け依存症に陥る人が急増していると聞けば、事態はかなり深刻化していると言わざるを得ない。
 そして、心の健康ばかりではなく、身体に及ぼす影響も大変気になるところだ。特に、長時間携帯を使用する子どもたちの視力の急激な低下がにわかに心配になってくる。手軽に携行できることと、大きなディスプレイ画面を備えることは決して両立しない。もっと大きな社会問題とされるべきだろう。是非、ご家庭で注意を喚起していただきたい。

 この1年、皆様はどのように過ごされましたでしょうか。明年がすべての方にとって、素晴らしい年になりますよう心からお祈り申し上げます。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年12月20日号掲載)

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第268号 60周年を迎えて

 先月8日に、調布市制施行60周年記念式典を挙行しました。
 当日は折悪しく朝から小雨そぼ降る天候だったにもかかわらず、市内外約600人にも及ぶ参列者にお越しいただき、滞りなく全プログラムを終了することができました。改めて、ご協力いただいたすべての関係者の皆様に心から感謝申し上げます。
 式辞でも申し上げましたが、昭和30年4月1日に、調布町と神代町が合併して東京都で8番目の市となる調布市が誕生しました。爾(じ)来60年の歳月が経過する中で、紆余曲折はあったにせよ、調布市がこれまで地道に歩んできた道のりを顧みた時、先人により脈々と築かれてきた礎の上に今日の素晴らしいまちが存在することに深い感慨を覚える次第です。そして、現在市政をお預かりする一人として、改めて身の引き締まる思いを禁じ得ません。
 それとともに皆様には、今後も躍動的に変貌を遂げていく調布市の、活気と賑わいに満ちた新たなまちの創造をより確実なものとするためにも、さまざまな問題に関する一層の市民参加を切にお願い申し上げます。
 また、60周年記念事業は、今年度内、継続的に実施されます。映画のまちにふさわしいイベントも企画されておりますので(註)、皆さんどうかお楽しみ下さい。

調布市長 長友貴樹

(註)「角川大映スタジオ展」12月19日(土曜日)・20日(日曜日)、「石原裕次郎展」1月9日(土曜日)から11日(祝日)、「日活調布撮影所展」2月11日(祝日)から14日(日曜日)、「調布映画祭2016」3月9日(水曜日)から13日(日曜日)。

(市報ちょうふ 平成27年12月5日号掲載)

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第267号 年内いっぱい、スクラッチ

 皆さんは、もうスクラッチカードを体験されただろうか。
 これは、地方創生関連予算を原資として、日本全国の自治体で実施されている商業活性化事業だ。ただ、大半の自治体では、単なるプレミアム付き商品券配布事業であるのに対して、調布市では、一人でも多くの市民に利益を共有してもらいたいとの思いから、当たる確率が8割と極めて高いスクラッチカード方式を採用している。カードの配布枚数はなんと100万枚。
 この方式は全国的にも極めて珍しく、予算の有効な活用例として国(内閣府)からも高い関心を持たれている。事業の実施期間は11月から年末までの2カ月間だ。
 もちろん私自身もすでに、飲食店を中心に何店舗かでカードをいただいた。その結果、事前の説明通り、100円券および300円券の当たる確率が高いことを実感した。少額とは言え、やはり嬉しいものだ。
 また、お店によってはハズレ券にも枚数により特典を設けていただいている。その経費はお店の自己負担とのことだが、「この機会に一人でも多くのお客さんに喜んでもらえればね」とのお言葉は誠に有難い。
 日本全体の景気浮揚に大きな期待を寄せつつ、今後とも市独自の産業振興策に積極的に取り組んでいきたい。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年11月20日号掲載)

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第266号 国際的使命の議論を

 シリアの内戦に端を発した難民問題が深刻化している。振り返れば、20世紀半ば以降だけでも、グアテマラのバナナ事件、イラン・コントラ、パナマ・ノリエガ、さらにはイラク・フセイン問題など、大国の思惑により発展途上国の運命が翻弄された事案は余りにも多い。
 そのたびに、何の罪もない弱者が路頭に迷い、死の恐怖に直面することになるが、それに対して単なる同情の念を表するだけでは、今後も起こり得る同様の事態に何ら積極的な貢献を果たすことはできない。
 欧米各国は、微妙な温度差を有しながらも、シリア難民救済に主体的に関わろうとしている。これについて、中東地域において構成国間に強い確執を生む要因を20世紀に発生させたことに対する贖(しょく)罪意識が一部の国に存在することは事実であろうが、他方、彼らが人道的な配慮をグローバルな視点で持ち得ていることも否定できない。
 そして、今後は従来にも増して日本の対応が世界中で注目されることになるだろう。即時に多くの外国人を受け入れる態勢を整えることは困難にしても、今後の労働者不足といった経済的側面だけでなく、国際的使命をいかに果たすかについての議論に現時点で正面から取り組む必要があると言える。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年11月5日号掲載)

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第265号 真摯な研究を継続して

 今年も自然科学の分野で2つのノーベル賞が日本にもたらされた。その誇らしい朗報に接しながら、私は今夏の市長会研修の内容を思い起こしていた。
 講師としてお招きしたのは、筑波大学大学院の教授であり、先端技術企業の社長も務められる山海嘉之(さんかいよしゆき)氏。演題は、「革新的サイバニックシステムが創る未来」。要するに、先端技術を駆使した装置を身に着けることにより、身体機能を改善、補助、拡張、再生することができるというもので、身体障害のある方が機能を回復することができる、大変優れたロボット治療機器とのことだった。興味のある方は、インターネット等でぜひその素晴らしさを詳しくご覧いただきたい。
 ただ、私が感銘を受けたのは、そのロボット技術の卓越した優秀性もさることながら、山海教授の淡々とした語り口の中に誰もが感じとられるであろう、研究者としての矜持(きょうじ)だった。同氏の技術を凌駕(りょうが)せんとする外国企業の追い上げは激しいとのことだが、今後とも優位を保ち続けるとの気概が強く感じられた。
 長い経済低迷期の中で、ともすると自信喪失と言われがちなわが国ではあるが、ノーベル賞受賞者を含めて、真摯に真理を探究し国際的に高い評価を得る多くの研究者の存在に、日本の明るい未来を見る思いがする。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年10月20日号掲載)

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第264号 W杯がやってくる

 英国時間9月19日(日本時間20日深夜)に、同国ブライトンで行われたラグビーワールドカップ対南アフリカ戦において日本が勝利を収めたことは、まさに世界のラグビー界における歴史的快挙と言えるだろう。
 そのラグビーW杯の次回開催地が日本であることはご存知かと思われるが、9月28日にその2019年大会の組織委員会からわが市に朗報がもたらされた。それは、19年大会の開会式および開幕戦を味の素スタジアム(註1)で行うことが正式決定されたというものだ。今回の英国大会で自信をつけ、より強化された日本チームの活躍などを間近で見る機会が与えられたのだ(註2)。
 すでに、2020年のオリンピックについては、調布市において近代五種、7人制ラグビー、バドミントンの開催が決定し、その他、サッカーや自転車のロードレースが行われる可能性も残されている。
 今後、東京都などと綿密な連絡を取りつつ両大会の開催に必要な準備にあたるが、並行して観光振興、国際交流、また経済面でのメリットなどにつながる施策を近隣の自治体とも協調の上で検討していくこととなる。一過性に留まらない多摩地域、そして東京全体の発展をもたらす計画をみんなで協力して作り上げていきたい。

調布市長 長友貴樹

(註1)開催時の名称は東京スタジアムの見込み。
(註2)開幕戦以外に、味の素スタジアムにおいて数試合開催予定。

(市報ちょうふ 平成27年10月5日号掲載)

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第263号 平時の備えを

 9月12日早朝(午前5時49分)の地震では、大勢の方が思わず飛び起きられたことだろう。私も、家ですぐにテレビをつけたが、最大震度5弱を記録したのは関東地方全域でなんと調布市だけということで、一気に眠気が吹っ飛んだ。テレビ報道のせいか、地震発生直後に市外の知人からお見舞いの連絡をいただくなどした。有難いことだ。ただ、隣接する自治体でも震度3程度にとどまったところもあり、その差異に違和感を持たれた方もおられたのではないだろうか。
 市役所では、6時台にはすでに危機管理担当を中心に20人を超える職員が集結し、消防団の方々とともに、全市域の被害状況把握などに努めた。そして、幸い損害が軽微にとどまったことが確認できたため、7時過ぎには災害対策本部の設置見送りを決めた。(註)
 今回は大過ないことに安堵の胸をなでおろしたが、自然災害を正確に予測することは難しい。その僅か二日前には、北関東を中心とする一帯に記録的な大雨が降り、堤防の決壊などにより甚大な被害が生じている。あの線状降水帯という縦長帯状の雨雲があと数十キロ西の地域を覆っていたら、わがまちにも河川の氾濫を含めて大きな影響があったに違いない。
 改めて、平時の備えの重要性を痛感させられた。

調布市長 長友貴樹

(註)6時台には、避難所にも担当職員が駆けつけ、開設準備を始めていた。

(市報ちょうふ 平成27年9月20日号掲載)

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第262号 みなさんの情熱が

 昔に比べると、天気予報は本当によく当たるようになった。一両日の範囲なら、大きく外れることは滅多にない。
 「布田駅前で夏祭りを開催できませんかね」とのご相談を布田駅近辺の複数の飲食店の方から承ったのは、3月に3,000平方メートルの駅前広場が完成した前後だった。数年前に諸般の事情で中断したイベントを是非復活させたいとの熱い思いがひしひしと伝わってくる。行政としても、そのような用途に供することも期待した広場の整備であり、当然ながら実現のために支援させていただきたいと考えた。幸いにして警察署のご理解も得られ、実施日も8月末に決まったが、その間の、新たなメンバーを含めた商店会の皆さんのご苦労は想像に難くない。
 そして迎えた27日の初日、心配された天候はなんとか持ちこたえ、復活を心待ちにしていた多くの人々で賑わった。だが、目玉の抽選が控える28日の予報は、当日朝の時点で、昼からずっと雨で夕方は土砂降りという最悪のものだった。まさに絶体絶命。私の脳裏には、準備に奔走された方々の残念そうな顔が浮かんできた。
 それが、なんとなんと夜に至るまで本格的な降雨は無かったのだ。主催者の情熱が天に通じた奇跡的な結果としか思えない。今後も素晴らしい行事を継続していただければ誠に有難い。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年9月5日号掲載)

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第261号 ご貢献を受け継いで

 夏の風物詩である調布の花火大会が近づいてきた。今年は8月22日の一発勝負。大勢の花火ファンのためにも、また、飲食店を含む関連サービス業の方々のためにも、なんとか良好な花火日和を期待したいものだ。
 調布の花火の歴史は古く、初めて多摩川の煙火大会が開催されたのは昭和8年のことになる。そして、戦争で一時中断されたものの、戦後はどこよりも早く復活し、昭和29年からは全日本輸出振興煙火競技大会として14回の開催を数えた。その後、14年間の中断後、地元の皆様のご尽力をいただき、昭和57年に調布市花火大会として再開され今日に至っている。
 その花火大会の歴史に深く関わり、発展に心血を注がれた調布市観光協会の大久保正二会長が去る6月27日に急逝された。本当に突然のことで、今でも信じられない思いだ。
 亡くなられる直前にお会いした際、会長はこのように言われた。「市長、調布にとってこの花火はいったい何なのかね。近いうちに議論をしようよ」。
 規模がこれほど大きくなったイベントを継続していく困難さをよく理解された上で、会長は何を仰りたかったのか。今回の開催を無事に終えたのちに、そのお言葉の意味をじっくり考えてみなければならないと思っている。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年8月20日号掲載)

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第260号 徹底した安全策の追求

 調布飛行場に隣接する住宅地に小型プロペラ機が墜落するという大事故が発生してしまいました。お亡くなりになった方には言葉もありません。心からお悔やみを申し上げます。また、怪我をされたり、家屋の損壊被害を受けられた皆様にもお見舞いを申し上げます。
 報道されているように、同飛行場は長年の経過を踏まえ、離島の空路確保や防災・医療・消防などの緊急活動の拠点としての役割を基本に、平成13年に都営飛行場となり現在に至っています。そして、飛行場の管理運営を所管する東京都とは、以前より調布、三鷹、府中の地元3市が協議の場を持ち、遊覧飛行の禁止や、年間離着陸回数の制限などを取り決めて、安全の確保を図ってきました。
 しかし、今回の本当に痛ましい結果を受けて、当然のことながら今一度、これらの取り決めを再点検いたします。また、その作業と並行して、改めて飛行場のさらなる安全確保について、東京都に対する緊急の要請を三鷹、府中両市と連名で行い、事故の早期原因究明および再発防止策の徹底や、それが達成されるまでの自家用機の離着陸自粛などを申し入れました。
 今後も、東京都と協議を継続して、徹底した安全策を追求してまいります。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年8月5日号掲載)

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第259号 揺蕩(たゆた)う病葉(わくらば)

 先月、作詞家横井弘さんの逝去が報じられた。昭和がまた遠くなっていくように感じられるのは、やはり淋しいものだ。仲宗根美樹さんの歌唱による名曲「川は流れる」を初めて聞いたのは昭和36年だった。
 「病葉を今日も浮かべて 街の谷 川は流れる」。当時、私はまだ小学生だったが、仲宗根さんの哀調を帯びたハスキーな歌声は強く心に響いた。この歌を口ずさめば、今でも高度成長前の貧しい日本の情景がありありと思い起こされる。私の脳裏に浮かぶのは、廃水で汚濁した川の水面(みなも)でゆらめく枯葉が静かに流されていく、もの悲しいまちの風景だ。「ささやかな望み破れて 哀(かな)しみに染まる瞳に 黄昏(たそがれ)の水のまぶしさ」。ままにならない人生に悩み疲れ傷つきながら、人は夕暮れの川の流れに何を思うのだろうか。私は、これほど効果的な体言止めの歌詞を他に知らない。
 また、翌37年にヒットした倍賞千恵子さんの「下町の太陽」も横井さんの代表曲の一つだ。それらの作品の底流に共通するのは、横井さんの社会や人間を見つめる視点の温かさだろう。挫折しても、絶望することなく前進していこうと常に語りかけてくれていた。そこに昭和の連帯感があったとも言えよう。その社会の共通項は、平成の世でも同様なのだろうか。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年7月20日号掲載)

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第258号 日本に生まれて

 市長になる前に、仕事で欧州に3回住んだ。フランスが2回、ベルギーが1回。通算すると、ちょうど9年になる。
 そのころの経験を思い起こしつつ、今回のギリシャ経済危機に関する報道に接しながら、改めて国のあり方について、さまざまなことを考えている。
 フランスの政治力は、やはり大したものだ。彼らの国際秩序に関する意見には、時にアメリカも一目置かざるを得ない。しかし、その発言力の裏付けとなる強い経済力の維持は、フランスにとって70年代以降、決して容易ではない。また、国民の自己主張は極めて強く、国論をまとめていくのは至難の業だ。
 対照的に、ベルギーには世界の覇権をリードするような使命感は存在しない。平和な欧州の中で穏やかに国が存在することのみを念願しているように見える。そもそも、同国の歴史はまだ200年足らずだから、国民の一体感もわが国などに比べれば希薄と言える。それと、世界的に最高水準の生活レベルを享受できていれば、それで良しとする意識が強いのかもしれない。
 今回、ギリシャ国民はどのような影響を受けるのだろうか。私は現在までに、欧州のみならず、最貧国を含めて30以上の国を訪れた。そのたびに、日本に生まれたことの幸福度について考えさせられている。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年7月5日号掲載)

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第257号 雨・雑感

 毎年、雨の季節がやってくると、耳に入る単調な雨だれの音を聞くうちに、自然と過去のさまざまな情景が思い起こされる。
 もう半世紀以上前になるが、私が小学生の頃は日本国中、道路の舗装率が極めて低かった。したがって水溜りも多く、ぬかるみに足を取られて転ぶ危険性も高かったので、長靴は雨天の必需品だった。今、それを常備している子どもはどの程度いるのだろう。
 雨に咲く花というと、もっとも印象に残っているのはやはり紫陽花(あじさい)だ。通学の道すがら、公園などに植えられた色とりどりの紫陽花が雨滴でキラキラと光るように見えるさまは本当に綺麗で、思わず足を止めて眺めたものだ。時がゆったりと流れていたように感じられるその頃は、季節の風情を感じ取るゆとりが、日常生活の中に今より大きく存在していたのかもしれない。
 しかし、雨の思い出はそのようなほのぼのとしたものだけではない。梅雨の時期ではないかもしれないが、篠突く雨とでもいうような豪雨に見舞われた夜は、子ども心に大きな恐怖感を覚えたものだ。ただ、風雨の轟音に怯えつつもいつしか自然に寝入ってしまうことができたのは、やはり家族といる安心感があったからだろう。親の庇護の有難みをしみじみ感じざるを得ない。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年6月20日号掲載)

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第256号 言葉は文化の鏡

 外国語の習得に関する質問を時折受ける。たとえば、英語の学習を幼児期から始めるべきかと。あくまで個人的見解だが、私はかなり慎重論者、つまり早期の外国語レッスンに諸手を挙げて賛成はしない。
 それには、いくつかの理由がある。第一には、日本語の基礎も固めきっていない子どもに他の言語を教えることの人格形成に与える影響だ。言葉による意思表現の内容はそれぞれの国の文化や国民性に深く根ざしている。第二に、将来その人間がどこを主たる拠点として生きていくかという問題だ。それが他国なら話は別だが、日本であれば、まずは当然のことながら、正しく教養ある日本語を完全に習得することが何よりも重要だ。正確な文法に基づき語彙を駆使して自分の意思を間違いなく伝える術を十代までにマスターしなければならない。そのためには約二千の漢字を自在に使いこなすことが求められる。
 外国語の本格的な学習は高校生以降でも十分に可能であるし、必ずしも母国語とする人々と同等な水準を追求する必要はない。
 私は社会に出てから人並み以上に外国語では苦労し、未だにお粗末なレベルではあるが、結論としてはそのように思っている。みなさんは、どのようにお考えでしょうか。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年6月5日号掲載)

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第255号 季節の潤いの中で

 ゴールデンウィークあたりから、まちは急速に初夏の装いを整え始めてきた。さわやかな風を肌で心地よく感じながら、濃い緑に一気に色づいた木々を眺めるだけで自然に心和む思いがする。時折目に痛く飛び込んでくる木洩れ日もまた好ましい。
 まだコートの襟を立てながら、桜の訪れを心待ちにしていたのが何カ月も前のことのようにすら思えてくる。咲き終えた桜の花びらが風に舞うさまはたとえようも無くはかないが、その直後の新緑の鮮やかさで、我々の心はまた癒されていくのだろう。その季節の潤いをすべての方が純粋に受け止められればと心から思う。
 「五月病」という言葉がある。四月の新年度から所属した学校や職場にうまく溶け込めずに、一カ月後あたりから精神的に行き詰まってしまう状態を指す。その言葉自体は以前ほど使われなくなったかもしれないが、事態は間違いなくより深刻化しているようだ。若年者を含めて、抱えた悩みの解決策を見い出せないままに悪化させてしまう人達が増加している。
 それは決して特異な現象ではなく、誰しも同様な状況に陥る可能性はあると言えよう。各組織で、また社会全体で改善に向けて全力で取り組んでいかなければならない。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年5月20日号掲載)

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第254号 いつでも夢を

 平成27年度が始まった。学校で、職場で、そこはかとない期待と、それより大きいかもしれない不安感を胸に新生活がスタートする。「武者震いの4月」とでも形容したくなるような時季だ。
 新たな環境の中に身を置いて、すべての人が学業や仕事の上での目標を立てることは当然だ。ただ、ふと思う。その目標の中には、それぞれの夢が含まれているのだろうかと。
 経済が成長し、社会が便利に発展するにつれて、人が夢を追うことが少なくなると言われる。貧しく不便な時代だからこそ、人は未来の生活に憧れを込めた夢を抱くのかもしれない。
 もう半世紀前になるが、「夢であいましょう」というテレビ番組があった。ほのぼのとしたバラエティーだったが、なぜかユーモアと哀感の中に、毎回心和む余韻を感じさせてくれた。現代と比較にならないほど生活面の苦労が多かった時代だから、人々は夢を感じさせる番組に心の安らぎを求めたのかもしれない。
 ただ、生活レベルの向上、あるいは経済停滞の長期化に起因して、夢が日本人の意識から遠ざかっているとすれば残念なことだ。幸せの青い鳥は常に身近に存在しているはずではないだろうか。

調布市長 長友貴樹

(市報ちょうふ 平成27年4月20日号掲載)

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調布市行政経営部広報課 

電話番号:042-481-7301・7302

ファクス番号:042-489-6411

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