議員提出議案第6号 いわゆる「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の撤回を求める意見書提出について 上記の議案を提出する。 平成29年6月13日 提出者 調布市議会議員 川畑 英樹 賛成者 調布市議会議員 広瀬 美知子 同 丸田 絵美 同 榊原 登志子 同 二宮 陽子 同 岸本 直子 同 大河 巳渡子 いわゆる「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の撤回を求める意見書 現在、政府が提出した「テロ等準備罪」を新設する「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会で審議されているが、これまでの国会審議において、同法案が過去3度国民の強い反対があり廃案となった「共謀罪」法案と本質的には変わるものではないことが明らかとなっている。 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けたテロ対策を万全なものにすることは大前提であるが、世界で頻発するテロ事件を引き合いに出し「組織犯罪処罰法改正案」の早期成立を目指そうとする姿勢には疑問を感じざるを得ない。 そもそも法案提出前の政府の説明は、テロなど組織的犯罪の謀議に加わった場合に処罰の対象となる「共謀罪」について、適用対象や構成要件などを厳格にし、罪名を「テロ等組織犯罪準備罪」と改めるとされていた。 しかし、法案提出後明らかになったように、「テロ」は例示にすぎず、「組織的犯罪集団」の定義は過去廃案になった法案について刑事局長が答弁していたことを条文に書き加えただけにすぎないこと、「実行準備行為」の定義が具体性に欠けるものであることも明らかになった。さらには「一般の方々は対象にならない」という宣伝文句を副大臣が否定する事態まで起きており、政府の言う「適用範囲が十分に限定された」法律案と見ることはできない。 また、「共謀」を処罰するという法案の法的性質は何も変わらないことに加え、「既遂の処罰」を原則とする刑事法体系の原則を大きく変えるものであること、さらには現行法上の「未遂罪」よりも「共謀罪」の方が重罰となる罪が出てくるなど、法体系の整合性を損なう事態も明らかになった。 政府は、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)締結のため、国内法整備の必要性を立法事実として挙げているが、TOC条約はテロ対策条約ではない上、国連の「プライバシーに関する権利に関する特別報告者」から本法案に対してプライバシー権と表現の自由を制約するおそれがあるとして、深刻な懸念が表明されたところである。 衆議院で可決された後に行われた世論調査でも、「審議が不十分」の回答がおよそ6割、「今国会での成立は不要」の回答もおよそ6割、「法案への国民の理解が深まっていない」と答える人が7割を超えている。 以上のような状況を勘案すれば、過去に廃案になった共謀罪と同様に我が国の刑事法体系の基本原則を破壊し、憲法に定められた基本的人権を脅かすおそれの高い法律案の成立を認めることはできない。 よって、政府に対し、組織犯罪処罰法改正案を撤回するよう求める。 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 平成29年6月 日 調布市議会議長 田中 久和 提出先 内閣総理大臣 法務大臣 外務大臣 国家公安委員会委員長 衆議院議長 参議院議長