陳情文書表 (令和元年6月11日受理) 受理番号 陳情第7号 件名 地方自治体における自衛官募集の取り扱いに関する陳情 提出者の住所・氏名 (注)非公開情報 付託委員会 総務委員会 安倍首相は2月10日に行われた自民党大会で「新規(自衛)隊員募集に対して、都道府県の6割以上が協力を拒否している」「地方自治体から要請されれば自衛隊の諸君は直ちに駆けつけ、命をかけて災害に立ち向かうにもかかわらずであります。皆さん、この状況を変えようではありませんか。憲法にしっかりと自衛隊と明記して、違憲論争に終止符を打とうではありませんか」と発言しました。同趣旨の発言は国会でも繰り返され、自民党本部は、これに呼応し、党所属議員に「自衛官募集に対する地方公共団体の協力に関するお願い」と題する文書を配付し、選挙区内の自治体の状況を確認し募集事務の適正な執行への協力を呼びかけ、国会議員の力を利用して地方自治体へ働きかけました。 そもそも自衛隊法は、防衛大臣が地方自治体に協力を求めることができるとしていますが、自治体がそれに応ずる義務は定められていません。その法的事実を無視して安倍首相と自民党が地方自治体に協力を強制することは、法治国家にあるまじき行為であり、断じて許されません。 現在、防衛省は自衛官採用活動に役立てるため、主に18歳と22歳の住民の住所・氏名・生年月日・性別の情報を紙または電子媒体で提供するよう自治体に要請しており、これに対し90%の自治体が住民基本台帳の個人情報を何らかの形で提供しているが、そのうち紙または電子媒体で提供している自治体は全体の約36%となっているといいます。つまり安倍首相の発言は、紙または電子媒体で個人情報を提供しない64%を「協力拒否」自治体と見て、その状況を変えるために9条改憲を訴えたわけです。これまで「9条を変えても何も変わらない」と言ってきた安倍首相のこの発言は、はしなくもその9条改憲の狙いを明らかにしました。9条改憲は、「何も変わらない」どころか、限りなく個人の権利を侵害し、地方自治を破壊するものであり、私たちはまずこれに強く反対するものです。 安倍首相の狙いどおりに9条改憲が行われるならば、第1に、地方自治体が管理する基本的な個人情報が本人の同意なしに政府に全て提供され、個人のプライバシーを守る権利が根本的に侵害されます。具体的には自衛官任官適齢期に当たる全ての男女青年の住所・氏名等が自衛隊に提供され、自衛官応募が強力に働きかけられる状況になるでしょう。それは、戦前・戦中に市区町村の役場が全ての個人情報を管理し適齢期に達した者の徴兵検査を行い、その中から必要に応じて有無を言わさず徴兵を行った状況を思い出させるものです。第2に、地方自治体が地方自治の精神に基づき住民の暮らしと権利を守るために地域の状況に応じた自治を行う権利を奪い、地方自治体を全て国家の命令のもとに動かすことができるようになり、これまた戦中・戦時の地方政治の姿をほうふつとさせるものです。 ましてや改憲が実現しない段階で、個人の権利の侵害、地方自治の破壊をもたらす自衛官募集に関する地方自治体への協力強制は絶対に許すわけにいきません。それは、私たち調布市民の人権と自治権を侵害するものですから、政党・政派を超えて対処すべき問題です。 上記の趣旨に基づき、次のことを陳情いたします。 (陳情項目) 1 地方自治法第99条に基づき、国に対し、自衛官募集に関し地方自治体に協力を強制するような施策をとらないことを求める意見書を提出すること。 2 調布市においては、個人情報保護の原則にのっとり、自衛隊に対し住民基本台帳等に記載された個人情報の提供を行わないこと。