2 調布基地跡地留保地利用計画の作成にあたって 2-1 土地利用における前提条件 (1)留保地のこれまでの経過と国における活用の考え方 ①留保地のこれまでの経過 主な内容 昭和48年4月 国は,国有財産中央審議会に対して,「主要な米軍提供財産の返還後の利用について」を諮問した。 昭和49年12月 在日米軍から,大口返還財産として,関東村住宅地区が返還された。 昭和51年6月 国有財産中央審議会から,国に対して,「米軍提供財産の返還後の利用に関する基本方針について」答申がなされた。(三分割答申) 当分の間,処分を留保する土地として,関東村住宅地区に6haの留保地が設定された。 【三分割答申の概要】 大規模な返還財産について,概ね面積を3等分し,「地元地方公共団体等が利用する」,「国・政府関係機関等が利用する」,「当分の間,処分を留保する」こととして,処理するものとされた。 昭和62年 6月 国有財産中央審議会から,国に対して,「大口返還財産の留保地の取扱いについて」答申がなされた。(留保地答申) 「原則留保,例外公用・公共用利用」の考え方が示された。 平成6年6月 国は,「関東村住宅地区返還国有財産の処理の大綱」を決定した。 平成15年6月 財政制度審議会から,国に対して,「大口返還財産の留保地の今後の取扱いについて」答申がなされた。 「原則留保,例外公用・公共用利用」の考え方から,「原則利用,計画的有効活用」の考え方に方針が転換された。 7月 6月の審議会答申を踏まえた財務省通達が発せられ,関東財務局から,調布市に対して,調布基地跡地留保地(関東村住宅地区)の利用計画を策定するよう要請があり,利用計画の策定に向けた検討を開始した。 また,同通達により,国が留保地の暫定的な利用に積極的に取り組む方向性が明確に示された。 平成18年1月 財政制度審議会から,国に対して,「今後の国有財産の制度及び管理処分のあり方について」答申がなされた。 処分手続きの明確化,処分までの間の暫定活用や早期の売却等,効率性を一層重視した国有財産行政への転換が示唆された。 3月 平成17年12月の閣議決定「行政改革の重要方針」及び18年1月の財政制度審議会答申の趣旨を踏まえた財務省通達が発せられ,留保地を含む未利用国有地について従来以上に積極的な有効活用を図る方向性が示された。 ②国における活用の考え方 平成15年7月の財務省通達では,利用計画の策定要請と合わせて,関係地方公共団体に対する売却条件を緩和することや,民間活力の導入を認めること,また,国又は地方公共団体による暫定的利用を行うことなど,留保地の利用を促進する考え方が明確に示されています。 その後,平成18年3月の財務省通達では,処分までの間の暫定利用について民間利用を基本とするほか,処分等を留保した財産に関する機会費用(逸失利益)の公表を義務付けるなど,可能な限り,未利用国有地の従来以上に積極的な負担の最小化を図る方針が示されています。   (2)調布基地跡地に係る上位計画・関連計画の位置付け 「調布市総合計画」(平成13年策定)及び「調布市基本計画」(平成19年策定),「調布市都市計画マスタープラン」(平成10年策定)における留保地を含む調布基地跡地の位置付けより,留保地においては,スタジアム等周辺スポーツ施設や公園と補完・連携した娯楽・レクリエーション等の機能や,防災機能等を有した親しみやすい公園としての整備が求められています。 (3)立地の制約条件 当該留保地には,航空法によって建物等の高さ制限(17.4m~43.8m)が設けられています。 2-2 利用イメージの検討 (1)利用計画(素案)における利用イメージ 「利用計画(素案)」(平成17年度作成)では,留保地における土地利用は,公共利用を最優先することとし,当該留保地に望ましい土地利用方針(素案)を「防災機能・スポーツレクリエーション機能を有する活用」と考えました。 この方針(素案)に基づき,北部にスポーツゾーン,中央部に多目的ゾーンを配置し,非常時には留保地全体を防災拠点として活用するゾーニング(素案)を作成しました。 (2)利用計画(案)における利用イメージ 「利用計画(案)」(平成18年度作成)においては,同年度実施した市民参加や,現地調査等の結果を踏まえ,以下の基本的な考え方に基づく利用イメージを作成しました。 【基本的な考え方】 ①立地の都市計画法等の制限を踏まえた活用とする ②既存樹木の有効活用及び緑の保全に配慮したゾーニングとする ③非常時の活用に留意したゾーニングとする ④隣接する西町公園・都立武蔵野の森公園との連携を図る ⑤スポーツ機能は市全体のスポーツ施設配置の再検討を踏まえた機能とする 2-3 利用計画策定に向けたこれまでの検討 (1)平成16年度検討内容  利用計画の策定に向けて,庁内に調布市基地跡地留保地利用計画策定準備会を設け,地区の現況把握等を行うとともに,課題の抽出等の基礎的調査を行い,利用計画検討調査報告書として取りまとめました。 (2)平成17年度検討内容 利用計画の策定を円滑に進めるため,庁内関係部署及び関係行政機関で構成する「調布市調布基地跡地に係る留保地利用計画策定連絡協議会」(設置要綱)を設けるとともに,調布市の利用内容等を検討するための庁内組織「調布市調布基地跡地に係る留保地利用計画策定検討委員会」を併せて設置し,利用計画策定に向けた検討を重ねました。 平成17年4月27日第1回連絡協議会開催 ・留保地の概要について ・これまでの取組及び今後の予定について(現地視察) 5月24日第1回検討委員会開催 ・利用計画の策定について ・留保地に係る基礎的事項について ・平成17年度のスケジュール 6月20日第2回検討委員会開催 ・まちづくり基本方針(素案)の検討条件について ・土地利用ニーズについて 7月26日第3回検討委員会開催 ・まちづくり基本方針(素案)の検討の視点について ・土地利用ニーズについて 8月31日第4回検討委員会開催 ・まちづくり基本方針(素案)の目指すべき方向性について ・公共利用(各部提案等)の検討について ・民間利用の検討について 9月30日第5回検討委員会開催 ・まちづくり基本方針(素案)の目指すべき方向性について ・公共活用の方向性について ・民間利用を想定したニーズ調査について 11月1日第2回連絡協議会開催 ・前提条件,留意事項について ・利用計画基本方針(検討案)について ・各部提案に対する検討の概要について ・民間活用に関する検討について ・検討スケジュールについて 11月28日第6回検討委員会開催 ・第2回「連絡協議会」の開催結果について ・警視庁(第七機動隊)の動向について ・基本方針における公共利用の方向性を踏まえた公共利用の具体的な活用について ・土地利用のゾーニングについて 12月21日第7回検討委員会開催 ・国の処分条件等について ・公共利用の具体化検討について ・土地利用計画(素案)の検討について 平成18年1月20日第8回検討委員会開催 ・公共利用の具体化検討について ・検討内容のまとめについて ・今後の進め方について 2月16日第9回検討委員会開催 ・留保地利用計画素案(機能・ゾーニング)の検討 ・平成17年度における検討内容のとりまとめ 3月22日第10回検討委員会開催 ・平成17年度留保地利用計画検討結果について 3月29日第3回連絡協議会開催 ・平成17年度留保地利用計画検討結果について (3)平成18年度検討内容 上位計画での位置付けや周辺地域の特性を踏まえ,庁内検討により作成した利用計画(素案)について,市民参加や現地調査等により,さらに検討を重ね,利用計画(案)としてまとめました。 平成18年6月2日~23日 ・パブリック・コメント実施 ・パブリック・コメント手続により,留保地利用計画(素案)についての市民意見を募集 6月9日~11日 ・市民説明会開催 ・留保地利用計画(素案)についての市民説明会を開催 7月14日第1回検討委員会開催 ・留保地利用計画(素案)市民説明会等開催結果の報告 ・今後のスケジュールの検討 ・今後の検討事項の確認及び依頼 8月10日第1回検討委員会ワーキンググループ開催 ・各課検討結果の確認 ・整備内容・整備スケジュールの検討 8月22日第2回検討委員会開催 ・ワーキンググループ検討の進捗状況等の報告 ・今後のワーキンググループでの検討事項の確認(活用内容の検討・整備スケジュールの検討) 9月15日第2回検討委員会ワーキンググループ開催 ・打合せ結果,確認事項等の報告 ・整備内容・整備スケジュールの検討 9月27日第3回検討委員会ワーキンググループ開催 ・前回WG打合せによる変更後のスケジュールの確認 ・利用計画図の検討 ・施設の機能(公園,スポーツ施設,防災施設,駐車場・駐輪場,管理棟) ・施設の配置 ・パブリック・コメント意見への回答案の検討 10月23日第4回検討委員会ワーキンググループ開催 ・留保地配置イメージ図〔平常時〕(案)について ・市民説明会及びパブリック・コメントで出された意見に対する市の考え方(案)について ・平成18年度第1回調布基地跡地に係る留保地利用計画策定連絡協議会の開催について 11月1日現地調査実施(検討委員会ワーキンググループ) ・緑の現状,樹木配置等の確認 11月10日第1回連絡協議会開催 ・検討経過説明 ・検討状況報告 ・留保地利用計画(素案)市民説明会等開催結果 ・留保地配置イメージ図「平常時」「非常時」(案) ・整備スケジュール案 11月30日第3回検討委員会開催 ・ワーキンググループ検討の進捗状況等の報告(ゾーニング,整備スケジュール,現地調査後の主な意見等) ・今後の検討事項の確認 ・連絡協議会開催結果の報告 平成19年2月16日第5回検討委員会ワーキンググループ開催 ・留保地利用計画案(機能・ゾーニング等)の検討 ・平成18年度における検討内容のとりまとめ 3月16日第4回検討委員会開催 ・平成18年度留保地利用計画検討結果について 3月28日第2回連絡協議会開催 ・平成18年度留保地利用計画検討結果について  ①市民参加による利用計画(素案)の検討 平成17年度に作成した利用計画(素案)について,市民説明会4回とパブリック・コメントを実施し,市民説明会では41名,パブリック・コメントでは14件の意見をいただきました。   ◆市民説明会 平成18年6月9日 たづくり1002会議室 参加者7人 6月10日 西部地域福祉センター 参加者13人 6月11日 富士見地域福祉センター 参加者8人 6月11日 青少年交流館13人参加者合計41人  【市民説明会,パブリック・コメントで出された主な意見】 ●コンセプト・計画等全般に関する意見 ・市が取得して,スポーツ施設や防災機能を発揮できるよう公共活用すべき ・自然・緑を残してほしいなど,素案の内容について肯定的な意見が多く見られた ●土地活用に関する意見 ・野球場,サッカー場,グラウンドゴルフ等,様々なスポーツ施設の設置要望 ・健康・福祉施設の整備 ・キャンプ等子どもが自然を体験できる施設等 ②毎木(まいぼく)調査及び現地調査の実施 留保地を管理する財務省関東財務局の毎木(まいぼく)調査と合わせて,調布市でも現地調査を実施し,既存樹木の有効活用及び緑の保全に配慮したゾーニング(案)の前提条件として整理しました。 ※毎木(まいぼく)調査及び現地調査の結果(図)割愛 (4)平成19年度検討内容 スポーツ施設の再配置検討や調布市地域防災計画の修正に合わせて,留保地に設置するスポーツ施設や,地域防災計画における位置付けについて検討するとともに,本格活用までの間の暫定利用の方向性についても検討し,利用計画を策定しました。 平成19年4月17日第1回検討委員会開催 ・検討経過説明 ・調布基地跡地留保地利用計画(案)の内容説明 ・今後の進め方の検討 5月18日第1回検討委員会ワーキンググループ開催 ・各課の検討・確認事項の報告 ・留保地利用計画策定スケジュールの検討 5月23日第2回検討委員会開催 ・留保地利用計画策定スケジュールの確認 11月15日第1回連絡協議会開催 ・留保地利用計画策定に向けた今年度の取組予定の報告 ・意見交換 11月28日第3回検討委員会開催 ・留保地利用計画策定に向けた今後の取組予定の報告 ・各課の検討状況確認 平成20年1月15日第2回検討委員会ワーキンググループ開催 ・各課の検討状況確認 ・今後の取組予定の確認 3月17日第4回検討委員会開催 ・留保地利用計画の報告 ・今後の予定の確認 3月25日第2回連絡協議会開催 ・留保地利用計画の報告 ・今後の予定の確認 ①全市的なスポーツ施設再配置検討 調布市教育委員会では,平成19年10月に「調布市スポーツ振興計画」を策定しました。 同計画には,「生涯スポーツ社会」の実現に向け,施策の一つとして「市立体育施設の充実」を位置付けています。 この「市立体育施設の充実」を進める取組として,平成19年度に,市内に配置されているスポーツ施設の老朽化対策や調布基地跡地を中心とした新たな施設整備のあり方について,調布市スポーツ振興審議会において検討を行い,既存施設・用地の活用の可能性,既存施設の利用状況等を踏まえ,「調布市スポーツ施設再配置計画」を策定しました。 この計画の中で,調布基地跡地に位置する留保地は,新たなスポーツ施設の建設が可能な土地として,リトルリーグなど調布で伝統的に盛んなスポーツ等に配慮しながら,多摩川緑地公園内の市民野球場の代替的機能の確保に向けての全市的な課題や,西部地域のスポーツ施設配置の現状を踏まえ,硬式野球場とテニスコートを配置する予定地と位置付けられています。 また,施設整備にあたっては,世代間での交流やコミュニケーションが円滑に図られる施設や空間について,検討していくこととされています。 ②地域防災計画の修正に伴う防災機能の検討 国の防災基本計画,東京都の地域防災計画の修正及び近年発生した地震の教訓,社会情勢の変化等を受けて,平成19年度に,調布市地域防災計画を修正しました。 地域防災計画では,災害に強い都市基盤の整備を目指し,オープンスペースの確保として,公遊園等の整備とともに,防災機能を持つ公園の新設を掲げています。 さらに,避難や延焼防止の機能を持つ公園緑地の整備や農地の保全と合わせて,調布基地跡地留保地利用計画の策定を位置付けています。 また,災害応急対策の整備の一環として,災害等発生時の支援物資の受け入れや分配,防災公園の配置による市民への災害対策の啓蒙等を目的として,市内を大きく東西南北に分割し,それぞれに防災拠点を整備することとしています。 その中で,西部地域の防災拠点としては,調布基地跡地留保地利用計画により留保地に防災公園を整備することとして位置付けています。 2-4 中・長期的な財政見通し (1)調布市基本計画における財政見通し ■調布市基本計画(平成18年度策定)における財政見通し 今後の市税収入の見通しについては,個人市民税及び法人市民税において,好調な景気動向により,市税収入への好影響が期待できる状況にあります。しかし,固定資産税については,地価の上昇傾向が見え始めてきましたが,負担調整措置等により,当面は評価替えの3年周期で増減を繰り返すものと見込まれます。 一方,今後の中長期的な行政需要については,京王線連続立体交差事業,職員退職手当,新ごみ処理施設,既存公共施設の維持・保全等,短期間に多額の財源が必要になるものが見込まれ,経常的な経費のうち社会保障経費をはじめとする性質別経費ごとに想定した額を見込んでいます。(下表参照) 各年度の財源不足の解消については,毎年度の事務事業評価に基づく自主・自律的な改革改善を実施する中で,新たな財源確保・コスト縮減への取り組み,前年度繰越金の活用計画に基づく複数年での基金活用等によることとして収支均衡を図り,臨時的な財源対策を極力抑制することを基本的な方針と位置付け,行財政運営に取り組んでいます。 〔参考〕主要な行政需要と市税収入等の見込み(割愛) ※平成19年以降,原油等の原材料価格の高騰,円高・株安等,国際的な不安定要因による日本経済の不透明感の強まりを受け,法人収益の動向や個人所得への影響等も想定されることから,今後の市税収入等,十分留意する必要があります。