5-2 福祉人材の定着ワーキング 報告書 1 目的  昨今労働人口の減少に伴う、人材不足の問題は福祉分野問わず様々な業界や分野で課題となっている。そんな現状において、現在調布市内で働いている福祉従事者は調布市内の地域福祉を支える大切な存在である。新しい人材を確保することは直近の課題であるが、今現在調布市内で福祉に従事している人たちが、どうすればそのまま働き続けることができるのか、また離職をしたとしても調布市内で転職をすることができる方法を考える必要がある。本ワーキングでは、当事者、福祉従事者が支援提供時における課題や意見を出し合い、双方の理解をより一層深めることで、障害のある方がいつまでも支援を受け続けられるような環境づくりについて検討する。 2 ワーキングにおいて取り組む主な内容について ・ワーキングメンバー及び福祉関係者から意見を伺い、現状を把握する。 ・協議結果から導きだされた課題を考察、検討する。 3 ワーキンググループメンバー(敬称略) 座長 渡辺 裕一  (武蔵野大学 人間科学部社会福祉学科 教授)    新納 元気  (訪問介護事業所Humor サービス提供責任者)    若尾 佳則  (株式会社SOLあくとケア調布 所長)    嶋田 浩一  (特定非営利活動法人ちょうふの風 施設長)    大澤 宏章  (特定非営利活動法人羽ばたく会めじろ作業所 施設長)    秋元 妙美  (CILちょうふ 代表)    下村 清治  (当事者)    内海 康範  (合同会社マーレ相談支援事務所 代表)    河井 美里  (社会福祉法人調布市社会福祉事業団 ちょうふだぞう) 4 今年度の検討経過  第1回ワーキング (開 催 日)令和7年8月27日(水) 18時から20時 (開催場所)調布市総合福祉センター 201~203号室 (出 席 者)委員9名 事務局7名 (内  容) ① 今年度のワーキングの方針について ② 人材定着についての意見出し (主な意見) ◎福祉人材の離職・定着に関する意見交換 主な離職理由 ・理想と現実のギャップ:「思ったものと違った」という理由が最も多い。特に施設経験者がより利用者に寄り添う支援を期待して訪問介護に転職したものの,想像以上の多忙さや覚えることの多さに直面し,「向いていない」と感じて離職するケースが,勤務開始後1〜3ヶ月の初期段階で目立つ。 ・経済的な理由:給与の低さが原因で,結婚などを機に他業種へ転職したり,続けたくても続けられない状況がある。 ・人間関係:職員同士の対立や高圧的な態度など,職場の人間関係の悪化が離職に繋がるケースがある。 主な定着要因 ・良好な人間関係と承認:上司や同僚からの肯定的な言葉がけや励ましが,働くモチベーションに大きく影響する。 ・地域との連携,交流:事業所内だけでなく,市の連絡会などを通じた他事業所との交流が,仕事のしやすさや地域への帰属意識を育み,長期的な定着に繋がる。 ・個人のビジョンと組織の支援:将来の夢や目標と,現在の仕事の方向性が一致していること,また組織がそれを理解・支援する姿勢を持つことが強い動機となる。 ・達成感と自己成長:当初は興味がなかった仕事でも,教わりながら「できた」という達成感を経験することが,仕事に夢中になり継続する大きな理由となる。また,仕事上の困難を自己成長の機会と捉える姿勢も定着を後押しする。 ・働きがいと組織への参画:地域全体の課題解決に関わる機会や,育児・介護等との両立支援制度を職員と法人が共に作っていくプロセスそのものが,働きやすさと定着に繋がる。 座長より 職員の「やりたいこと」と会社の「やってほしいこと」の不一致を解消することが定着の鍵だと思う。退職希望者が出た際に,市内の他の事業所を紹介しあうのもよいのではないか。 (まとめ) ・若手人材確保のため,既存職員を通じたリファラル採用(友人・知人への声かけ)を検討する。 ・採用候補者に対し,仕事のリアルな実情を事前に説明し,ミスマッチを防止する取り組みを検討する。 ・職員のライフステージと仕事の両立を支援するため,現場の意見を収集し制度改善を推進するプロジェクトを検討する。 ・退職希望者を市内の他事業所へ紹介しあう「市内事業所間連携モデル」の実現可能性を探る。  第2回ワーキング (開 催 日)令和7年12月5日(金) 10時から12時 (開催場所)調布市総合福祉センター 201~203号室 (出 席 者)委員8名 事務局6名 (内  容) 福祉人材定着について必要な具体的な仕組み・アイデアについて意見交換 (主な意見) 1. 事業所間の連携強化と人材交流 職員の交換研修・交流制度  作業所連絡会で行われている「職員交換研修」の枠組みを,調布市全体の福祉分野に広げる提案がなされた。1〜2週間の短期的な交流から1年程度の長期的な人事交換まで,様々な形態を検討。これにより,相互理解が深まり円滑な連携や離職防止に繋がることが期待される。また,正規職員が複数の組織に所属する「ダブルアポイントメント制度」も参考になるとの意見があった。 採用・就職のマッチング精度向上  応募者が抱くイメージと実際の業務とのギャップを埋め,ミスマッチを防ぐため,求職者が入社前に複数の事業所を見学・体験できる機会を作るのはどうかとの意見があった。    また,応募者の希望に合う職場を事業所間で相互に紹介しあう「エージェント機能」の構築も提案された。 人材の相互融通(助け合いの仕組み)  小規模事業所では単独で柔軟な働き方に対応するのが難しいという課題に対し,事業所間で人材を融通し合う(アルバイトやサポート派遣など)仕組みが提案された。 2. 職員の定着と働きやすい環境づくり 服務規程の緩和と多様性の受容  髪の色やネイル等の服務規程を緩和し、見た目で判断するのではなく、多様な人材が「自分らしさ」を保ちながら働ける環境を整備することの重要性が強調された。実際に、事業所単位で自由なルールを設けることで離職率を低く抑えることに成功した事例も共有された。 また、近年の大学の実習指導においても、画一的な指導を行わない方針へと変化している。これらを踏まえ、調布市全体で「時代に即した服務規程」のあり方を共有・検討する必要性が示唆された。 柔軟な働き方の許容  夜勤ができないなど,個々の事情に合わせた働き方をルールとして認め,人材の相互融通などで人員をカバーする仕組み作りが重要であるとの意見があった。 新人職員へのサポート体制と育成環境の整備  新任職員が「何を質問してよいかわからない」という不安を抱える一方で、先輩側からは「聞かないと何も教えてもらえない(何も聞いてくれない)」と言われてしまうジレンマが共有された。こうした課題を解消するため、新人への対応方法を学んだり、新人が大切に育てられる育成環境を整えたりするための「研修」の重要性が議論され、複数事業所での共同実施が提案された。 子育て世代への配慮  子どもの体調不良による急な休みや早退などに理解を示し,相談しやすい職場風土を作ることが定着に繋がるとの意見があった。 3.職員のモチベーション向上と魅力発信 職員への感謝の表明  職員の頑張りを認め,感謝を伝えることが重要であるため、飲み会に参加しづらい職員にも配慮した形で「大切にされている」という感覚を伝える工夫が共有された。 金銭的インセンティブの活用  調布市民を担当する職員に補助金を出し,給与に反映させることで,市内での就労と定着を促進するアイデアが提案された。また,リファラル採用(職員紹介)で入社し,半年間勤務が続いた場合に紹介料を支払う制度も有効ではとの意見があった。 協賛店制度の提案  市内の店舗が介護・福祉職を応援する協賛制度を設け,ステッカー掲示や割引特典を提供することで,街全体で応援する雰囲気を作ることが提案された。 福祉職の魅力発信  スタッフ一人ひとりの得意なことや能力を把握し,それが事業所の強みとなるように活かす。職員の力が活かせる職場であることを外部に発信すれば,それが組織の魅力となるとの意見があった。 座長より  事業所間連携を要する複数のアイデア(職員交流,共同見学等)が提案されたが,どのアイデアから着手するかの優先順位付けを行う必要がある。 (まとめ)  次回以降のワーキングでは,今回の意見交換で出されたアイデアについて,取り組む優先順位について検討していく。 ・職員の交換研修 ・求職者向けの職場見学ツアー ・事業所間で人材を融通する仕組み ・働きやすいマニュアルや服務規程 ・職員への感謝を示すための具体的な施策(イベント,表彰制度,地域店舗との連携など) ・福祉従事者への補助金制度やインセンティブ  第3回ワーキング (開 催 日)令和8年1月27日(火) 10時~12時 (開催場所)調布市総合福祉センター 2階団体室 (出 席 者)委員8名 事務局6名 (内  容) 1.年間スケジュールと予算について 2.調布市の既存の取り組み紹介と運用状況   3.福祉人材定着について必要な具体的な仕組み・アイデアについて意見交換 (主な意見) 1.年間スケジュールと予算について  本日のグループワークでアイデアの優先順位付けと具体化を行う。4月に施策の必要性をまとめ、6月のワーキングで市への報告内容を完成させる。8〜9月の予算要求に間に合わせるため上半期に作業を集中させる。  新規事業の予算獲得は補助金がないと非常に困難。国や都の補助金対象となるか、既存事業の拡充として提案できるかを検討する必要がある。 2.調布市の既存の取り組み紹介と運用状況   (1)事業所間の連携強化と人材交流 ①職員交換研修(調布市福祉作業所等連絡会)  生活介護、B型作業所などが参加し、1~2日間の体験形式で実施。参加者には「知識向上」や「自信・誇りの醸成」といった効果が多数見られるが、事業所側の人員体制や受入負担が課題で、参加者数が伸び悩んでいる。また、研修調整は半年かけて行うため事務局の負担も大きく、輪番制で対応している。交換研修は市全体への拡大・制度化の検討余地あり。受入負担軽減と行政の支援が参加拡大の鍵となる。 ②職場見学ツアー(調布市福祉人材育成センター)  資格取得後の就業ハードルを下げる目的の施設見学企画を実施。過去3年間の職場見学企画(現在未実施)は毎回6〜10名参加。市内で就職・採用に至る事例がある。就業促進に一定の成果はあるが、人事交流へ発展させる設計が課題。 (2)職員の定着と働きやすい環境づくり ①新任職員の定着・育成入門研修(東京都社会福祉協議会)  毎年開催されているが、参加者の感想から単発・広域のウェブ研修は学習定着が弱い可能性が指摘されている。反復、対面要素、実地伴走などの方法改善が必要。 (3)職員のモチベーション向上と魅力発信 ①職員採用案内(調布市社会福祉事業団)  法人内の広報委員会主導で採用案内(HP・冊子)を全面改訂。現場や職員の1日のスケジュール・プライベートとの両立、交流会の様子や社会貢献活動、男女構成や離職率など具体的なデータやインタビューを掲載。可視化・具体化で魅力訴求を強化している。 ②広報誌わくわーく(調布市福祉作業所等連絡会)  年2回発行(約15年継続)。企業・団体との関係性紹介、職員特集、利用者の特技紹介など多面的に魅力を伝達する媒体として機能している。 3.福祉人材定着について必要な具体的な仕組み・アイデアについて意見交換  福祉人材確保・定着の課題解決策について、以下の4点が挙げられた。 (1)子育て世代への配慮  事業所にとって子育て配慮は重要という認識を共有。子育てと休暇取得の課題に対応可能な体制が必要との意見が出た。職員が子どもの急な事情で休む際に利用できる託児所の設置など提案された。  結論: 明確な制度設計は未定。次回以降で具体化を検討。 (2)交換研修・交流制度  交換研修について、既存の事例はあるが準備負担が大きい。職種横断は難易度が上昇。名称・目的を「交流・連携」としてハードルを下げ、定期的交流で「顔の見える関係」を形成し、いざという時の人材融通に繋げる案も出た。交流中心の仕組みで段階的に職種間連携を目指す。 交換研修・交流の継続で相互支援が可能な関係性を構築する。2拠点間だけでなく3~4拠点のネットワーク構成も検討。派遣・調整の事務負担や制度設計の課題あり。また、施設系は融通が比較的しやすい一方、ヘルパー・相談員など1対1支援は融通が難しいという課題もある。  施設間で応援に行ける人材グループを平時から形成し、急な欠勤(子どもの病気や対応等)への当日対応を可能にする体制を作ることで安心して休める環境づくりができ、子育て世代への配慮・支援にも繋がる。  結論:段階的ネットワーク構築とルーティン化で事務負担を軽減しつつ融通可能性を高める。最適な派遣制度設計は今後の検討事項として継続する。 (3)魅力発信  福祉の仕事の魅力を伝えることを目的として、調布市内の福祉事業者の情報を集約したポータルサイトの構築が提案された。調布の事業者一覧・マッチング機能・職員の背景(ストーリー)や職種別「1日の流れ」など働き方を可視化する。 結論: ポータルサイトは人材確保の入口として有効。制作・運営体制は今後検討。 (4)エージェント機能  福祉人材育成センターに「エージェント機能」を持たせるという提案がなされた。 このエージェントは、地域の各事業所の詳細情報(例として業務内容、人間関係、待遇など)を把握し、求職者とのマッチングや事業所間の人材交流(見学・実習等)をコーディネートする役割を担う。予算措置の観点から、AIの活用なども視野に入れることで情報収集やマッチング効率化など実現可能性が高まるという意見が出た。また、関連補助金の可能性も考えられる。  結論: 公平公正な運用を重視するため福祉人材育成センターへの機能追加は有望。予算措置・委託拡大での実現を検討。 (まとめ)  次回以降のワーキングでは,今回の意見交換で出された以下の4つのテーマについて更に深掘りし、実現に向けた具体的な内容や予算案を検討していく方針となった。 ・子育て世代への配慮 ・交換研修・交流制度と人材の相互融通 ・魅力発信(ポータルサイト) ・エージェント機能の導入 ■これまでの到達点 本ワーキンググループでは、福祉人材の離職防止と定着促進を目指し、現状の課題分析と具体的な解決策の検討を行ってきました。 〈1.離職・定着要因の明確化〉  主な離職理由として、「理想と現実のギャップ(特に勤務開始1〜3ヶ月の初期段階)」、「低賃金などの経済的理由」、「職場の人間関係」があることを確認しました 。  一方で、定着には「良好な人間関係と承認」、「他事業所との交流による地域への帰属意識」、「組織による個人のビジョン支援」が重要であることを確認しました 。 〈2.既存施策の評価と課題抽出〉  既存施策として、職員交換研修、新任職員の定着・育成研修、職員採用案内、福祉の職場・施設見学ツアーについて振り返りました。「職員交換研修」は参加者に効果(他事業所の理解や関係の構築)がある一方、事業所の受入負担や事務局の調整業務が重く、参加数が伸び悩んでいる現状を把握しました 。  データやインタビューを用いた「魅力の可視化」の取り組みとして、広報誌「わくわーく」や社会福祉事業団の採用案内などを共有しました 。 〈3.具体的施策案の創出〉  「職員交換研修」の市全体への拡大や、1年程度の長期人事交流、複数の組織に所属する「ダブルアポイントメント制度」など、柔軟な人材活用のアイデアが出されました 。  ミスマッチ防止のための「事前職場体験・見学ツアー」や、事業所間で求職者を紹介し合う「エージェント機能」の構築が提案されました 。小規模事業所間の「人材の相互融通(ヘルプ派遣)」や、髪型・ネイルなどの服務規程緩和による「自分らしく働ける環境づくり」の重要性が共有されました 。 ■今後の展望と課題  これまでの議論を踏まえ、令和8年度以降は施策の具体化と予算化、そして実行体制の構築に重点を置きます。 〈1.施策の具体化と予算獲得への動き〉  令和8年4月までに施策の必要性をまとめ、6月頃には市への報告内容を完成させます 。 8〜9月の予算要求に向け、新規事業については国や都の補助金対象となるか、あるいは既存事業の拡充として提案できるかを精査します 。 〈2.具体化にむけたアイデア〉  議論で挙がったアイデアの中から以下の4つのテーマについて更に深掘りし、実現に向けた具体的な内容や予算案を検討していきます。 ・子育て世代への配慮 ・交換研修・交流制度と人材の相互融通 ・魅力発信(ポータルサイト) ・エージェント機能の導入