(令和8年度答申第2号) 答 申 1 審査会の結論  処分庁が,令和4年6月20日付け4調都外発第810002号で「陥没,空洞事故に関する問合せ対応メモ一覧(No.24)他9件」(以下「一部公開文書」という。)を一部公開決定とした処分は,非公開とした部分及びその理由が妥当ではないことから,取り消すべきである。 2 本件の経緯 年月日 経緯  令和4年 1月19日  審査請求人は,調布市情報公開条例(平成11年調布市条例第19号。以下「本条例」という。)第6条第1項の規定により,市政情報公開請求書を処分庁に提出し,「4月14日付の個人情報保護審査会意見書の資料4−2に記載された資料番号23〜59の資料(原則電子データで)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。  処分庁は,同月19日付けで本件市政情報公開請求書(以下「本件請求書」という。)を受理した。  令和4年 5月 6日  処分庁は,本件請求について,本条例第12条第3項の規定により公開決定等期間特例延長を行った。  令和4年 6月20日  処分庁は,本件請求について,本条例第11条第1項の規定により市政情報一部公開決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。  公開決定処分を行った市政情報(以下「本件開示文書」という。)の件名は下記のとおりである。  ・陥没,空洞事故に関する問合せメモ一覧(No.24)  ・面談メモ(No.29)  ・住民対応メモ(No.32)  ・調布市東つつじケ丘2丁目付近の市道等の陥没・空洞に係る影響範囲  の固定資産税の減免要請について(No.38)  ・次回協議の日程調整のお願い Re:「次回協議に向けてのご確認事項」  及び要望書について(回答)(No.42)  ・Re:次回協議の日程調整のお願い Re:「次回協議に向けてのご確認  事項」及び要望書について(回答)(No.43)  ・住民対応メモ(No.45)  ・「ボーリング調査範囲の拡充に関する陳情について「趣旨採択」の議  決を受けての声明文」について(No.50)  ・市民電話対応メモ(No.51)  ・211026 面談メモ(No.57)  令和4年 9月19日  審査請求人は,本件処分を不服とし,審査請求書(以下「本件審査請求書」という。)を審査庁に送付し,行政不服審査法(平成26年法律第68号。以下「法」という。)第2条の規定により,審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。  審査庁は,同月20日付け付けで本件審査請求書を受理した。  令和4年10月18日  処分庁は,法第29条の規定により,弁明書(以下「本件弁明書」という。)及び証拠資料を審査庁に提出した。  審査庁は,同日付けで本件弁明書及び証拠資料を受理した。  令和4年11月17日  審査請求人は,法第30条の規定により,反論書(以下「本件反論書」という。)を審査庁に提出した。  審査庁は,同日付けで本件反論書を受理した。  令和5年 2月15日  審査請求人からの申出により口頭意見陳述を実施した。  令和5年 2月15日  審査請求人から補充的書面の提出期限延長を求める申出があった。  令和5年 3月 3日  審査請求人から「不服審査請求令和4年度第18号事件について,口頭意見陳述後の意見書」と題する書面が提出された。  令和5年 3月14日  審査庁は,期限内に処分庁から補充的書面の提出がなかったことから審理を終結し,本条例第19条の2第1項の規定により,調布市情報公開審査会(以下「当審査会」という。)に諮問(以下「本件諮問」という。)を行い,諮問書とともに本件審査請求書,本件弁明書及び本件反論書の写し(以下「本件諮問書等」という。)を当審査会に提出した。 3 本件審査請求の内容 (1) 本件審査請求の趣旨  調布市長が審査請求人に対し行った本件処分の取消しを求める。 (2) 本件審査請求の理由    審査請求人の本件審査請求書,本件反論書,本件口頭意見陳述,補充的書面及び本条例第24条に基づく口頭での意見陳述における主張はおおむね以下のとおりである。 ア 公開文書について,本条例第7条第2号及び本条例第8条に反して,非公開とすべき範囲を超えて過大に非公開にしている。個人を特定できる情報以外は非公開としてはならない。 イ 本条例第7条第6号に該当する理由として「公にすることにより市民からの率直な相談,問合せを妨げるおそれがあるため」は,最も許容できない詭弁であり,世間の一般常識に照らして理解不能である。「公にすることにより市民からの率直な相談,問合せを妨げるおそれがあるため」という理由は,条例第7条第6号の「市の機関又は国,独立行政法人等若しくは他の地方公共団体が行う試験問題」,「職員の身分取扱い」,「争訟の処理方針」,「監査及び検査の計画その他の事務事業に関する情報」のいずれにも該当しないし,「公にすることにより,当該事務事業の性質上,当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」でもない。   本条例第7条第6号に該当するとの処分庁の主張は,単なる抽象的危惧感を言うに過ぎないものであり,具体的根拠や事例を挙げて反論すべきである。   ウ 「211026 面談メモ(No.57)」について,「ボーリング調査の要望(P11,12,18〜20)」,「補修の押し売り状態(P,18)」,「NEXCO の調査信じられるか(P,20)」,全般的なやり取り(P18〜P24)などの箇所は,個人や地域に特化していない内容と推定され,非公開にする理由はない。     また,事業者や市に対する一般的な評価や要望なども含まれているなら,それらを非公開にする理由はない。     『次回協議の日程調整のお願い Re:「次回協議に向けてのご確認事項」及び要望書について(回答)    (No.42)』及び『Re:次回協議の日程調整のお願い Re:「次回協議に向けてのご確認事項」及び要    望書について(回答)(No.43)』について,これら2つのメールの写しについては,メール本文中の    語句は個人や地域を特定するものでなく非公開に該当しないと推察される。 4 処分庁による本件弁明書等の趣旨   本件弁明書等による処分庁の主張を要約すると,おおむね以下のとおりである。 (1) 弁明の趣旨  「本件審査請求を棄却する。」との裁決を求める。 (2) 本件審査請求に対する弁明 ア 本件処分における非公開理由の一つとして挙げている条例第7条第6号の規定については,「公にすることにより,市が行う事務事業の適切な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報が記録された市政情報は非公開とすること」を定めたものである。  処分庁に寄せられる個人からの意見や相談については,その内容を公開することで,市に対する率直な意見や相談を萎縮させるおそれがある。地域の安全・安心の確保と市民の抱く不安の払しょくに向けた取組を最優先に行う中で,市に対する率直な意見や相談が妨げられることは,市民が感じる課題や不安の声等,市が事業者へ的確な要請や指摘を行ううえでの判断材料が得られないことにつながり,事務事業の適切な遂行に支障を及ぼすものである。   イ 本条例第7条第2号の規定については,直接的に特定の個人が特定される情報だけではなく,他の情報と照合することで特定の個人が識別できる情報についても非公開とすることを定めているが,外環道事業に関する意見や相談は陥没箇所周辺にお住いの方からのものであることが多く,たとえ氏名や住所を非公開としても,その内容だけで,個人が特定される可能性がある。 5 審査会の判断  本件請求の範囲について当審査会は,審査請求人の本件審査請求書,本件反論書,本件口頭意見陳述,補充的書面及び本条例第24条に基づく口頭での意見陳述における主張並びに処分庁の本件弁明書及び理由説明における主張を具体的に検討した結果,以下のように判断する。 (1) 本件請求の経緯 ア 令和3年11月,市政情報公開請求の手続過程において個人情報の不適切な取扱い事案が発覚した。本事案の内容は,東京外かく環状道路事業(以下「外環事業」という。)に関する市民からの市政情報公開請求において,市政情報公開請求書の写しを電子メールに添付して当該文書等を作成した機関に送信し,その際,請求者名等の記入欄にマスキング処理を施すことなく送信したことにより,請求者の個人情報が当該機関に漏えいすることとなったものである。 イ これらについて本事業に関する市の所管部署である都市整備部で事実確認を行ったところ,街づくり事業課において令和3年6月10日から同年10月29日までの市政情報公開請求書の写し9枚を電子メールで事業者へ送ったことが判明し,市は,同年11月10日に「個人情報の漏えいに関するお詫びと御報告」として市ホームページでの公表を行っている。 ウ 令和4年1月の本件請求時における外環事業に関する所管部署は,都市整備部付外環担当であったが,その後,令和6年4月から都市整備部まちづくり推進課となった。そのため,本件答申時における処分庁は,都市整備部まちづくり推進課である。 (2) 一部公開の範囲   ア 公開文書の内容について   本件請求の件名は「4月14日付の個人情報保護審査会意見書の資料4−2に記載された資料番号 23〜59の資料(原則電子データで)」である。請求の対象となっている「資料4−2」とは,5(1)アに係る個人情報の不適切な取扱い事案について,調布市個人情報保護審査会において本件事案の全体像の把握するための審議を行うにあたり,「外環道(陥没事故)事業における市民(個人・団体)からの問合せ,相談及び要望等」として処分庁から調布市個人情報保護審査会に提出されたものである。  本件公開文書である当該資料には,市が受けた外環事業に関連した個人・団体からの問合せ,相談及び要望等のほか,意見や相談を行った者の氏名,住所が記録されている。 イ 本条例第7条第2号の解釈について  本件処分において直接的に個人情報に該当する氏名,住所のほか,直接的に特定の個人が特定される情報ではないが他の情報と照合することで特定の個人が識別できる情報について,条例第7条第2号に該当する情報としている。審査請求人は,処分庁が本条例第7条第2号に反して,非公開とすべき範囲を超えて過大に非公開にしている旨主張していることから,本条例第7条第2号による非公開の範囲について検討する。  本条例第7条第2号では,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別することができることとなるもの。」を非公開情報として定めている。   ウ 本条例第7条第6号の解釈について  次に,処分庁に寄せられる個人からの意見や相談内容にかかる情報のうち,個人を特定または他の情報と照合することにより個人を識別し得る情報を除いた情報について,処分庁は公にすることにより市民からの率直な相談,問合せを妨げるおそれがある情報を本条例第7条第6号に該当することから市政情報の一部を非公開としている。審査請求人は,処分庁が本条例第7条第6号に該当することを理由として非公開とした情報は同条同号に該当しないと主張していることから,本条例第7条第6号の該当性について検討する。  本条例第7条第6号では「市の機関又は国,独立行政法人等若しくは他の地方公共団体が行う試験問題,職員の身分取扱い,争訟の処理方針,監査及び検査の計画その他の事務事業に関する情報であって,公にすることにより,当該事務事業の性質上,当該事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を非公開情報として定めており,「情報公開事務の手引(令和2年度版)」には,同条同号の趣旨・解釈について,次のように記述されている。「事務事業」とは,本号本文に列記した項目に限定されるものではない。また,同種の事務事業が反復される場合の将来の事務事業も含まれる。「事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは,事務事業に関する情報を公にすることによる利益と支障とを比較衡量した結果,公にすることの公益性を考慮してもなお,当該事務事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過しえない程度のものをいう。この場合,「支障を及ぼすおそれ」は,単なる抽象的な可能性では足りず,当該事務事業の適正な遂行に支障を生じることについて,法的保護に値する蓋然性が認められなければならない。 エ 本条例第7条第2号及び第6号の該当性について  このことから,本件公開文書について鑑みるに,本件公開文書に含まれる意見や相談を行った者の氏名及び住所の情報については,本条例第7条第2号の非公開情報に該当し,当該部分について非公開とすることは妥当である。  また,個人・団体からの問合せ,相談及び要望等について,他の情報と組み合わせることにより,個人を特定することができる情報が含まれている場合には本条例第7条第2号に該当することが考えられる。  ただし,処分庁が個人・団体からの問合せ,相談及び要望等の非公開情報のうち,本条例第7条第2号に該当せず,本条例第7条第6号に該当すると判断した部分について,本条例第7条第6号に定める「事務事業」が同号本文に列記した項目に限定されるものではないとしても,同号に定める「事務事業に関する情報」に該当するかについては疑義がある。仮に本条例第7条第6号に基づき非公開とされた個人・団体からの問合せ,相談及び要望等の部分が「事務事業に関する情報」に該当すると解したとしても,処分庁が主張するような「処分庁に寄せられる個人からの意見や相談については,その内容を公開することで,市に対する率直な意見や相談を萎縮させるおそれ」という「事務事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」は,抽象的な可能性に過ぎず法的保護に値する蓋然性を認めることはできない。 オ 本条例第8条の適用について  また,本条例第8条では,「実施機関は,公開請求に係る市政情報の一部に,非公開情報が記録されている場合において,非公開情報に係る部分を容易に区分して除くことができ,かつ,区分して除くことにより当該公開請求の趣旨が損なわれることがないと認められるときは,当該非公開情報に係る部分以外の部分を公開しなければならない。」と規定している。本件処分において本条例第7条第2号に基づき非公開としている氏名等は,その他の情報と容易に区分して除くことが可能である。本条例第7条第2号に該当しない情報については本条例第8条に基づき部分公開すべきものである。 (3) その他    その他,審査請求人はるる主張しているが,当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。 (4) 結論    よって,原処分は取り消すべきである。 6 当審査会の処理経過   当審査会は,本件諮問について以下のように審査を行った。 年月日 処理経過 令和5年 3月14日 審査庁から提出された本件諮問書等を受理  令和7年11月12日 情報公開審査会(令和7年度第4回) 本条例第24条の規定による審査請求人の口頭での意見陳述  令和8年 1月26日 情報公開審査会(令和7年度第5回) 審査 7 調布市情報公開審査会委員 職名 氏名 備考 会長 草川 健 弁護士 副会長 井上 寛 弁護士 委員 稲益 和子 弁護士 委員 佐藤 惠子 市民