陳情文書表(令和7年8月27日受理) 受理番号 陳情第28号 件名 ちょうふLiqlid(リクリッド)の健全性確保に関する陳情 提出者の住所・氏名 ※非公開情報 付託委員会 総務委員会 ※原文のまま記載 1.陳情の趣旨   調布市が導入した市民参加型プラットフォーム「ちょうふLiqlid(リクリッド)」は、市民や市関係者の様々な対話を促進し、開かれた政策形成プロセスを実現する上で重要な取り組みであると認識しております。しかしながら、匿名での利用が可能なこのプラットフォームには、特定の利益を持つ組織や個人による意図的な世論操作、いわゆる「アストロターフィング」の潜在的なリスクが存在します。こうした不正行為は、市民の真の声を歪め、公平な政策決定を阻害する重大な懸念であります。 つきましては、市民参加の場が悪用され、特定の勢力に都合の良い世論が形成されることを防ぐため、以下の事例を参考に、健全な市民参加を確保するための仕組みを構築されることを強く求めます。 2.アストロターフィングの具体的悪用事例   事例1:日本たばこ産業(JT)によるパブリックコメントへの組織的投稿   2009年、神奈川県が屋内の公共的な場所での喫煙を規制する条例制定を進めた際、県は県民から広く意見を募るパブリックコメントを実施しました。締め切り直前まで賛成意見が反対意見を大きく上回っていましたが、締め切り2日前に回答数が急増し、最終的に反対意見が逆転する異常な事態が発生しました。 この急増について、後に日本たばこ産業(JT)が自社の従業員に「回答協力」を依頼したことを認めました。この事例は、特定の企業が市民参加の「形式」を悪用し、実態を伴わない「組織票」によって世論を意図的に操作しようとした明確な証拠です。この手法は、オンラインプラットフォームの匿名性とアクセスの容易さを利用して、あたかも広範な市民が特定の意見を支持しているかのように見せかけるものです。近年全国的に、タバコ産業・販売事業者がタバコ消費の拡大のために商店街を通じて喫煙所の設置を求めたり、検討委員会等でタバコ販売事業者が市民として委員に就任し受動喫煙対策に反対したりするなど様々な政策干渉をしており、他の業界による政策干渉も含め、このような場が悪用されることが懸念されます。   事例2:海外における国家主導のアストロターフィング   海外では、国家レベルで組織的な世論操作が行われています。その代表例が、中国の「五毛党」と呼ばれるオンラインコメント部隊です。彼らは政府に有利なナラティブ(語り口)をオンラインフォーラムやコメント欄に大量に投稿することで、自発的な公共の支持があるかのように見せかけようとします。 こうした国家主導の行為は、地理的な制約を持たないデジタルプラットフォームを通じて、日本の地方自治体の政策決定プロセスに影響を及ぼす可能性を否定できません。安全保障や外国人への生活支援など、国際的な文脈を持つテーマが議論される際には、外国勢力による組織的な干渉の標的となり得るため、厳重な警戒が必要です。 3.健全な市民参加を確保するために必要な措置   市民参加型プラットフォームの誠実性を守り、真に市民の声が反映される場とするため、以下を参考に、必要な措置を検討・実施することを陳情いたします。 (1) 本人確認プロセスの強化 意見表明のページではニックネーム(匿名)での表示であっても、アカウントの登録情報として、調布市との関係(在住・在勤等)、本名、電話番号、住所の登録を求めることによって、誹謗中傷や上述のような懸念の抑止になります。また、明らかに会社組織からのアクセス(リモートホストが「co.jp」であったり、AWSやその他企業が使用するproxyであったりするなど)や、海外からのアクセス(IPアドレス等により識別)である場合には、アカウント登録を保留するなどの対策を検討ください。これにより、組織的な悪用を防ぎながら、市民の多様な意見表明の機会を維持できます。 (2) 異常な投稿パターンの監視と対策 短期間での投稿数の急増、類似した内容の大量投稿、同一IPアドレスからの複数アカウント利用など、組織的・自動化された行動を検出するための技術的監視ツールの導入を検討ください。これにより、不正な世論操作の兆候を早期に発見し、対応することが可能となります。 (3) 意見投稿の透明性ガイドラインの策定 企業の関係者や特定の利益団体が意見を投稿する際には、その所属や利害関係を明確にすることを義務付けるガイドラインを策定すべきです。これにより、意見の背景を市民が適切に判断できるようになり、透明性が向上します。 (4) 政策形成にあたっては、常にこのような懸念を意識すること 市および市議会における政策形成にあたっては、一見多くの支持を得ているように見える投稿・尤もらしくみえる投稿であっても、ちょうふLiqlid(リクリッド)には常にこのような懸念があることを念頭に入れ、適切に判断いただくようお願いします。 以上の提言は、デジタル市民参加の利点を維持しつつ、その脆弱性から民主的なプロセスを守るための不可欠な措置です。調布市議会におかれましては、本陳情をご検討いただき、市民の声を尊重し、公平で開かれたまちづくりを実現するためのご尽力を賜りますようお願い申し上げます。 参考情報 1.神奈川県の受動喫煙対策アンケートへの妨害に対する抗議文 日本禁煙学会、 http://www.nosmoke55.jp/action/0702zaimu_jt.html 2.インターネット上の偽・誤情報対策に係る マルチステークホルダーによる取組集―総務省、 https://www.soumu.go.jp/main_content/000945181.pdf 3.健康影響評価に関する専門家会議世界禁煙デー2012記念フォーラム: 「たばこ産業の干渉を阻止しよう」、 https://wkc.who.int/ja/resources/news/item/31―05―2012―world―no―tobacco―day―2012―――stop―tobacco―industry―interference 4.Astroturfing―Wikipedia、 https://en.wikipedia.org/wiki/Astroturfing 5.Public Hearings―Foreign Interference Commission、  https://foreigninterferencecommission.ca/public―hearings