(令和7年度答申第3号) 答 申  1 審査会の結論  処分庁が,令和4年2月25日付け3調都外発第3310001号で「・東京外かく環状道路 現場視察会の開催について 他14件」を全部公開決定とした処分は,妥当である。 2 本件の経緯 年月日  経緯 令和3年12月27日  審査請求人は,調布市情報公開条例(平成11年調布市条例第19号。以下「本条例」という。)第6条第1項の規定により,市政情報公開請求書を処分庁に提出し,「調布市(都市整備部,環境部,下水道課)が保有する東京外環道事業に関する,2021年11月27日から12月27日の期間に調布市が作成したり,外部から入手したり,外部に提供した文書,写真,Eメール等電子データを含む情報一式(原則電子データでの交付を)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。  処分庁は,同日付けで本件市政情報公開請求書(以下「本件請求書」という。)を受理した。  令和4年1月11日  処分庁は,本件請求について,本条例第12条第2項の規定により公開決定等期間延長の通知を行った。  令和4年2月25日  処分庁は,本件請求について,本条例第11条第1項の規定により市政情報公開決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。  公開決定処分を行った市政情報の件名は下記のとおりである。(以下「本件開示文書」という。)  ・東京外かく環状道路 現場視察会の開催について  ・地盤調査の実施について  ・第4回シールドトンネル施工技術検討会 議事要旨 ・東京外かく環状道路工事現場付近での地表面陥没事故地盤調査状況及び地盤補修に関する検討状況のご説明について  ・調布市域(入間川東側エリア)における追加調査に関する資料の配布について(お知らせ)  ・調布市域(入間川東側エリア)における追加調査結果(概要版)  ・調布市域(入間川東側エリア)における追加調査結果(本編) ・調布市域(入間川東側エリア)における追加調査結果(参考資料) ・「第5回シールドトンネル施工技術検討会を開催します」  ・第5回シールドトンネル施工技術検討会 議事要旨  ・第23回東京外環トンネル施工技術検討委員会の開催について  ・第23回東京外環トンネル施工技術検討委員会 議事要旨  ・東京外環沿線都区市部長級打合せ 議事録  ・東京外環沿線都区市担当者打合せ(令和3年12月24日開催)資料一式  ・東京外かく環状道路(関越〜東名)地盤調査状況及び地盤補修に関する検討状況のご説明」の開催結果概要について  令和4年5月25日  審査請求人は,本件処分を不服とし,審査請求書(以下「本件審査請求書」という。)を審査庁に送付し,行政不服審査法(平成26年法律第 68号。以下「法」という。)第2条の規定により,審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。  審査庁は,同日付けで本件審査請求書を受理した。  令和4年6月30日  処分庁は,法第29条の規定により,弁明書(以下「本件弁明書」という。)及び証拠資料を審査庁に提出した。  審査庁は,同日付けで本件弁明書及び証拠物件等を受理した。  令和4年8月2日  審査請求人は,法第30条の規定により,反論書(以下「本件反論書」という。)を審査庁に提出した。  審査庁は,同日付けで本件反論書を受理した。  令和4年12月21日  審査請求人からの申出により,法第31条の規定に基づく口頭意見陳述(以下,「本件口頭意見陳述」という。)を実施した。  令和5年1月6日  審査請求人から補充的書面の提出期限延長を求める申出があった。  令和5年1月27日  審査請求人から「不服審査請求令和4年度第13号事件及び第14号事件について,口頭意見陳述後の意見書」と題する書面が提出された。  審査庁は,同日付けで当該書面を受理した。  令和5年2月14日  審査庁は,期限内に処分庁から補充的書面の提出がなかったことから審理を終結し,本条例第19条の2第1項の規定により,調布市情報公開審査会(以下「当審査会」という。)に諮問(以下「本件諮問」という。)を行い,諮問書とともに本件審査請求書,本件弁明書及び本件反論書の写し(以下「本件諮問書等」という。)を当審査会に提出した。  当審査会は,同日付けで本件諮問書等を受理した。 3 本件審査請求の内容 (1) 本件審査請求の趣旨  調布市長が審査請求人に対し行った本件処分を取り消すとの採決を求める。 (2) 本件審査請求の理由  審査請求人の本件審査請求書,本件口頭意見陳述,補充的書面及び本条例第24条に基づく口頭での意見陳述における主張はおおむね以下のとおりである。   ア 文書の特定について     2021.12.27付けの情報公開請求書で求めたものは,調布市が保有する東京外環道事業に    関する2021.11.27?12.27の期間における作成・入手・提供文書であるが,そのうち    都市整備部外環担当のものを審査対象とする。  審査庁は「対象となる文書は,以下の市政情報であることを確認する」として,16件(公開決定文書15件及び一部公開決定文書1件)の文書を列記しているが,この審査請求で求めているものは,そうではない。外環事業に関する2021年11月27日〜12月27日の期間の文書,Eメール等の情報公開請求に対して,11月27日〜12月27日の期間においても,調布市,特に,調布市まちづくり事業課が,外部,特に外環事業者や沿線自治体や住民等との間で日々やりとりしている情報など16件以外にも公開すべき文書があるはずなのに,それらを公開してないではないか。  また,これまでの審査請求の中で明らかになったことだが,個人からのものはすべて請求対象ではないとの勝手な解釈のもとに公開されなかったものがある。  さらに,処分庁は審査請求人のこれまでの情報公開請求の状況を見ると,個人情報漏えい問題に関する文書と外環事業に関する文書は区別して情報公開請求をしていることから,審査請求人が主張する文書は個人情報漏えい問題に関する文書であって,外環事業に関する文書ではないと判断したと主張しているが,個人情報漏えい問題と外環事業に関する文書を区別して情報公開請求をしている認識はなく,そうした認識を処分庁が持っているのであれば改めていただきたい。  従って,市政情報公開請求の対象となるべきものとして,12月10日の調布市長と外環3事業者の面談記録等,外環被害住民連絡会・調布とのやり取りメールなど,また,2022年4月14日付個人情報保護審査会の意見書に付属する資料NO.24(時期区分エ)「陥没,空洞事故に関する問合せ対応メモ一覧 ※R3.3.24からR4.11までの計61件」を含む,外環被害住民からの苦情等及びそれらを外環事業所に送付したもの,さらに,匿名通報者が調布市長宛に送った封書等の文書が推定される。  また,個人情報漏えい問題に関する外環ネット他の団体からの「2021年11月16日付公開質問状の回答について」令和3年12月17日付(3調都街発第2610003号)も本情報公開の対象文書であるが,公開されていない。   イ 探索の範囲について    処分庁は,本件情報公開請求の対象となる文書の存否を確認するため,執務室等の行政文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルを改めて探索したが,新たに該当となるものはなかった旨主張するが,Eメールが短時間に削除される異常な運用が日常化しているとのことなので,情報公開決定時点から3か月(以上)後の「改めて探索した」時点において存在してなかったとしても不思議ではなく,それでもって情報公開決定が適切にされたとまでは言えない。 4 処分庁による本件弁明書等の趣旨   本件弁明書等による処分庁の主張を要約すると,おおむね以下のとおりである。 (1) 弁明の趣旨   「本件審査請求を棄却する。」との裁決を求める。 (2) 本件審査請求に対する主張要旨  本件審査請求は,本件処分にかかる文書の特定が不当なものとして処分を取り消すよう求めていることから,次のとおり弁明する。   ア 文書の特定について   審査請求人は,従前から本件情報公開請求とほぼ同一件名で情報公開請求を繰り返しており,対象文書の特定について審査請求人と確認してきた。その際に,本件情報公開請求のような東京外かく環状道路事業に関する情報公開請求の対象は,あくまで関連する外環三事業者又は他自治体と市との間のものに限り,個人からの意見等は除く旨確認してきたため,本件情報公開請求についても同様の認識の下で対応したものである。  なお,審査請求人が文書の存在を主張する市長と外環三事業者との面談記録については,その内容・性質から議事録を取っていないため,面談記録は存在しない。  また,審査請求人のこれまでの情報公開請求の状況を見ると,個人情報漏えい問題に関する文書と外環事業に関する文書は区別して情報公開請求をしている。処分庁(外環担当)としてはこうした状況を踏まえ,審査請求人が主張する文書は個人情報漏えい問題に関する文書であって,外環事業に関する文書ではないと判断した。   イ 探索の範囲について   文書の特定にかかる探索の範囲については,本件情報公開請求の対象となる文書の存否を確認するため,執務室等の行政文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルの探索を行った。本件請求は,請求の件名に「「調布市(都市整備部,環境部,下水道課)が保有する」と指定があることから指定部署が保管・保有する文書を探索範囲とし,探索を行ったことから探索の範囲に不適切な点はない。また,本件審査請求がなされた以降においても,対象となる文書の存否を確認するために執務室等の行政文書を保管する場所及びコンピュータ上の電子ファイルを改めて探索したが,本件処分において対象となったものを除き,対象とすべき文書は見つけられなかった。 5 審査会の判断  当審査会は,審査請求人の本件審査請求書,本件反論書及び本件口頭意見陳述等における主張並びに処分庁の本件弁明書及び理由説明における主張を具体的に検討した結果,以下のように判断する。 (1) 本件請求の経緯 ア 令和3年11月,市政情報公開請求の手続過程において個人情報の不適切な取扱い事案が発覚した本事案の内容は,東京外かく環状道路事業(以下「外環事業」という。)に関する市民からの市政    情報公開請求において,市政情報公開請求書の写しを電子メールに添付して当該文書等を作成した    機関に送信し,その際,請求者名等の記入欄にマスキング処理を施すことなく送信したことにより,    請求者の個人情報が当該機関に漏えいすることとなったものである。   イ これらについて本事業に関する市の所管部署である都市整備部で事実確認を行ったところ,街づく    り事業課において令和3年6月10日から同年10月29日までの市政情報公開請求書の写し9枚を    電子メールで事業者へ送ったことが判明し,市は11月10日に「個人情報の漏えいに関するお詫び    と御報告」として市ホームページでの公表を行っている。   ウ 令和3年12月の本件請求時における外環事業に関する所管部署は,都市整備部街づくり事業課で    あったが,その後,2回の組織改編があり,令和4年2月の本件処分時は都市整備部付外環担当,令    和6年4月から都市整備部まちづくり推進課となった。そのため,本件答申時における処分庁は都市    整備部まちづくり推進課である。 (2) 請求の範囲について  本件審査請求では,特定の文書が請求の対象とされるべきであったかという文書の特定について争点となっていることから,請求の範囲について検討する。  まず,本条例第6条では市政情報の公開の請求の方法を定めており,同条第2項第2号に市政情報公開請求書に記載する必要がある事項として「公開を請求しようとする市政情報を特定するために必要な事項」と規定していることから,請求の範囲は,市政情報公開請求書に記載された内容に基づき判断するものである。  次に,市政情報公開請求は,特定の事件関係者に限らず請求できる制度であるから,基本的には,先入観を持たずに通常人の読解力を基準として市政情報公開請求書の記載内容を解釈すべきであって,市政情報公開請求を受けた実施機関で独自に市政情報公開請求書を理解してそこに特定の意味付けを行うことは適当ではない。逆に,文書の存在を応答したことに対して,市政情報公開請求者が独自の解釈に基づく独自の意味付けをしたとしても,それをもって当該請求者の当該解釈ないし意味付けが直ちに是認されるものでもない。  本件の請求する市政情報の件名又は内容は,「調布市(都市整備部,環境部,下水道課)が保有する東京外環道事業に関する,2021年11月27日から12月27日の期間に調布市が作成したり,外部から入手したり,外部に提供した文書,写真,Eメール等電子データを含む情報一式(原則電子データでの交付を)」である。前述のとおり,市政情報公開請求書の内容は通常人の読解力を基準として解釈すべきであることから,「事業に関する情報」といった場合,「事業自体に関する情報」と解するのが自然であり,「事業自体に関する情報」とは,一般的に事業の計画や進捗,協議,意思決定,結果等,事業の実施に関する情報を指すものと考えられ,事業に付随して実施機関に寄せられた個人からの相談や意見等までをも当然に含むものと解することはできない。  また,審査請求人と処分庁の主張は食い違っているものの,請求日時点において本件請求が事業に付随して実施機関に寄せられた個人からの相談や意見等までを含むものであるという意味付けのされた請求であったことを推認するような事実を認めることはできなかった。  以上により,本件請求における請求の範囲は,「東京外環道事業自体に関する情報」であり,事業に付随して実施機関に寄せられた個人からの相談や意見等を含むものではないと判断する。 (3) 本件請求にかかる文書の特定について  本件処分において全部公開された本件開示文書の内容は,外環事業の工事における地表面陥没・空洞事故に伴う追加調査についての実施内容や結果,外環事業に関する検討会の議事要旨,東京外環沿線都区市の打合せ議事録及び資料,外環事業に関する視察会や説明会の案内及び開催結果概要等であり,その性質は「東京外環道事業自体に関する情報」といえる。    他方,審査請求人が本件反論書等で本件請求の対象文書であると主張している外環被害住民連絡会・   調布とのやり取りメール,外環被害住民からの苦情等及びそれらを外環事業所に送付したもの,匿名通 報者が調布市長宛に送った封書等の文書及び個人情報漏えい問題に関する外環ネット他の団体からの公開質問状に対する市の回答である,令和3年12月17日付「2021年11月16日付公開質問状の回答について」は,事業の計画や進捗,協議,意思決定,結果等,事業の実施に関する情報と解す   ることはできないことから,「東京外環道事業自体に関する情報」又はそれに準ずる情報とはいえず,   本件請求の対象であったと認めることはできない。  また,同様に審査請求人が本件請求の対象文書であると主張している,12月10日の調布市長と外環3事業者の面談記録は作成していないとする処分庁の説明に,特段不自然,不合理な点があるとはいえず,これを覆すに足りる事情は認められない。  加えて,本件請求時における文書の特定にかかる探索の範囲に関する処分庁の説明等を踏まえると,本件開示文書のほかに本件請求に該当する文書は保有していないとする処分庁の説明に,特段不自然,不合理な点があるとはいえず,これを覆すに足りる事情は認められない。  よって,本件請求にかかる文書の特定は,妥当である。 (4) その他 その他,審査請求人は,るる主張しているが,当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。  (5) 結論 よって,「1 審査会の結論」のとおり判断する。 6 当審査会の処理経過   当審査会は,本件諮問について以下のように審査を行った。 年月日 処理経過 令和5年 2月14日 審査庁から提出された本件諮問書等を受理  令和6年11月20日 情報公開審査会(令和6年度第4回) 本条例第24条の規定による審査請求人の口頭での意見陳述,  令和7年 3月24日 情報公開審査会(令和6年度第6回) 処分庁の事情聴取 審査 7 調布市情報公開審査会委員 職名 氏名 備考 会長 草川 健 弁護士 副会長 井上 寛 弁護士 委員 稲益 和子 弁護士 委員 佐藤 惠子 市民