(令和7年度答申第2号)                         答 申 1 審査会の結論  処分庁が,令和4年2月25日付け3調総総発第3310007号で「匿名者から調布市長宛に 2021年11月中頃に送られたとされる封書及びその同封物」(以下「一部公開文書」という。)を一部公開決定とした処分は,調布市情報公開条例に定める決定の期限を徒過しており不適切であるが処分を取り消す事由にはならないことから,妥当である。 2 本件の経緯 年月日 経緯 令和4年1月7日 審査請求人は,調布市情報公開条例(平成11年調布市条例第19号。以下「本条例」という。)第6条第2項の規定により,東京電子自治体共同運営サービスを通じて,「匿名者から調布市長宛に2021年11月中頃に送られたとされる封書及びその同封物(2020年10月30日頃に調布市街づくり事業課から中日本高速東京支社東京工事事務所副所長に送られたメールや東つつじヶ丘〇-〇-〇などの建築計画概要書のコピーなど)」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。 処分庁は,同日,本件請求について紙に印刷し,その内容を確認した。 令和4年2月21日 処分庁は,本件市政情報公開請求書(以下「本件請求書」という。)を収受した。   同年2月25日 処分庁は,本件請求について,本条例第11条第1項の規定により市政情報一部公開決定処分(以下「本件処分」という。)を行った。   同年5月25日 審査請求人は,本件処分を不服とし,審査請求書(以下「本件審査請求書」という。)を審査庁に送付し,行政不服審査法(平成26年法律第68号。以下「法」という。)第2条の規定により,審査請求(以下「本件審査請求」という。)を行った。 審査庁は,同日付けで本件審査請求書を収受した。   同年6月30日 処分庁は,法第29条の規定により,弁明書(以下「本件弁明書」という。)及び証拠資料を審査庁に提出した。 審査庁は,同日付けで本件弁明書及び証拠資料を収受した。   同年8月4日 審査請求人は,法第30条の規定により,反論書(以下「本件反論書」という。)を審査庁に提出した。 審査庁は,同月8日付けで本件反論書を収受した。   同年12月21日 審査請求人からの申出により口頭意見陳述を実施した。 令和5年1月6日 審査請求人から補充的書面の提出期限延長を求める申出があった。   同年1月17日 審査請求人から「不服審査請求令和4年度第11号事件及び第12号事件について,口頭意見陳述後の意見書」と題する書面が提出された。 審査庁は,同日付けでこの書面を収受した。   同年1月27日 審査請求人から「不服審査請求令和4年度第11号事件及び第12号事件について,口頭意見陳述後の意見書」と題する書面を一部訂正する旨の文書が提出された。 審査庁は,同日付けでこの書面を収受した。   同年2月14日 審査庁は,期限内に処分庁から再弁明書等の提出がなかったことから審理を終結し,本条例第19条の2第1項の規定により,調布市情報公開審査会(以下「当審査会」という。)に諮問(以下「本件諮問」という。)を行い,諮問書とともに本件審査請求書,本件弁明書及び本件反論書の写し(以下「本件諮問書等」という。)を当審査会に提出した。 3 本件審査請求の内容 (1) 本件審査請求の趣旨  調布市長が審査請求人に対し行った本件処分の取消しを求める。 (2) 本件審査請求の理由    審査請求人の本件審査請求書,本件反論書,口頭意見陳述,補充的書面及び本条例第24条に基づく口頭での意見陳述における主張はおおむね以下のとおりである。 ア 本条例第12条に定める「公開請求のあった日」について (ア) 市政情報公開請求があった日についての処分庁の解釈は誤っている。処分庁は,令和4年1月7日に提出した本件請求書について,正当な理由もなく受け付けず,令和4年2月21日に受付印を押して,その日を請求があった日としている。市政情報公開請求書が提出されたときには,速やかに収受されるべきであって,収受しないという行為は情報公開までの期間の始点を恣意的に移動させる行為であり,条例違反である。   (イ) 本件の市政情報一部公開決定通知書における「令和4年2月21日付けで請求のありました」という記述は事実に反するので,そのような虚偽記載の決定通知書による処分は違法であり,取り消さなければならない。 (ウ) 本件請求の対象文書である匿名者から市長の私宅宛への個人情報漏えいを告発する封書(以下「匿名封書」という。)は,令和3年11月10日頃には実質的に公文書になっているにもかかわらず,意図的に受け付ける部署を決めないでおくのは意図的なサボタージュ,不作為の作為であり,公文書管理において不当である。 イ 一部公開の範囲について   (ア) 本条例第7条第2号ア及びイの適用について a 匿名封筒に同封されたメールの写しには,「調布市まちづくり事業課の■■と申します。街づくり事業課■■■■■■に代わり連絡させていただいております」と記載されている。この街づくり事業課職員(管理職を含む)は地方公務員であるので,本条例第7条第2号イの「当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」に該当する。この部分には,「職」に該当する情報も含まれるはずであり,「職」までマスキングするのは条例違反である。処分庁が弁明書で主張した理由をもって非公開とするのは不当であると考える。 b 処分庁の弁明にある「市から送信したと思われるメールの写しではあるが,職務上作成した文書かどうかの確証がなく,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとは判断できない」という記述は,送信者に確認を取り,職務上作成した文書であると確認して広く社会に説明してきていることではないのか。  また,この文書以外にも,多くの削除されたメール等について,市役所の外部の誰かが,メール等のコピーを示した場合,それらすべてについて職務上作成した文書かどうかの確証がなく,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとは判断できないと主張するのか。     c 公務員の氏名のマスキングについては,調布市が作成した文書であろうとそうでない場合であろうと,個人情報保護の観点から決定すべきである。匿名封書は,市の見解でも遅くとも令和4年2月21日時点では公文書であったのだから,市が作成した文書でないからという理由は成立しない。市が作成していなくても,市が入手して保有した文書についても,適切に調布市情報公開条例に従って運用すべきである。匿名封書に同封されたメールが本物のコピーかどうかわからないというが,単に発信者に確認すればよい話である。また,すでに発信者らは事実を認めているのであるから,それに反して,本物かわからないなどというような主張は二枚舌であり,言い逃れにもならない。    (イ) 本条例第8条に基づく部分公開について  匿名封書に同封された建築計画概要書のほとんどの箇所がマスキングされているのは,違法である。図面や各部の寸本などまでマスキングするのは本条例第8条違反である。 4 処分庁による本件弁明書等の趣旨   処分庁の本件弁明書による主張及び審査会における説明を要約すると,おおむね以下のとおりである。 (1) 弁明の趣旨  「本件審査請求を棄却する。」との裁決を求める。 (2) 本件審査請求に対する弁明   ア 本条例第12条に定める「公開請求のあった日」について     本件請求書の対象文書は市長の自宅に宛てられた郵便物であり,本件請求書が提出された令和4年1月7日の時点では,当該郵便物を市政情報として取扱うべきか検討していた。また,その後も,従前対応した事例のないものであったことから,情報公開請求の対象となるべきものなのか,どの部署が収受すべきか等,検討と調整に時間を要していた。一部公開決定文書は,個人情報漏えいの調査のために調布市情報公開審査会及び調布市個人情報保護審査会に提出された文書であり,各審査会の審議後,令和4年2月21日に処分庁において収受したものである。本件請求書についても同日付けで収受し,令和4年2月25日に一部公開決定を行っている。  処分を取り消すべき事由には該当しないと考えるが,本件請求書を確認した日から1か月以上経過した後の令和4年2月21日に収受したことは,迅速な情報公開という観点から制度の趣旨に照らし,反省すべき対応であったと受けとめており,公開請求を確認した後,速やかに収受すべきであったと考える。 イ 部分公開の範囲について    (ア) 本条例7条第2号ア及びイの適用について    本条例第7条第2号イでは「当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)の役員及び職員並びに地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」を非公開とする情報から除外する情報として規定している。    審査請求人がメールの写しとして主張している匿名封書に含まれた文書は,一般的にメールを送信する際に使用されている文章構成で作成されているものの,送受信の日時や送信先及び送信元のメールアドレスの記載はなく,また,メールシステムの類から出力,印刷されたような書式ではないことから市の職員が送信したメールの写しであると断定することはできない。  また,市ホームページで公表しているとおり,市政情報公開手続の一環において,個人情報をマスキング処理していない市政情報公開請求書をメールに添付し関係事業者に送付することによって個人情報を流出させたという事実は認めるところである。しかし,匿名封書に同封されていた「市の職員が送信したメールのような文書」に書かれた内容と同一内容のメールを送信したかという点については,市の使用するメールシステム等において同一内容のメールを探索したが保有しておらず送信した事実を確認できなかったことから,認めるものではない。  このため,当該文書の内容が職務上作成した情報かどうかの確証はなく当該文書に書かれた情報がその職務の遂行に係る情報であるとは断定できないことから,当該文書に書かれた個人に関する情報は本条例第7条第2号イの規定が適用されるものではない。 (イ) 本条例第8条に基づく部分公開について  建築計画概要書は建築指導課で閲覧・複製ができる資料である。匿名者からの封書に同封された建築計画概要書に記載された図面や各部の寸本等の情報は,当該情報を閲覧可能な建築計画概要書と照合することで建築主を特定することが可能である。よって,建築計画概要書に記載された図面や各部の寸本等の情報は,本条例第7条第2号に定める「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別することができることとなるもの」に該当する非公開情報であることから,本条例第8条に反するものではない。 5 審査会の判断 (1) 本件請求の経緯   ア 令和3年11月,市政情報公開請求の手続過程において個人情報の不適切な取扱い事案が発覚した。    本事案の内容は,東京外かく環状道路事業(以下「外環事業」という。)に関する市民からの市政情    報公開請求において,市政情報公開請求書の写しを電子メールに添付して当該文書等を作成した機関    に送信し,その際,請求者名等の記入欄にマスキング処理を施すことなく送信したことにより,請求    者の個人情報が当該機関に漏えいすることとなったものである。   イ これらについて本事業に関する市の所管部署である都市整備部で事実確認を行ったところ,街づく    り事業課において令和3年6月10日から同年10月29日までの市政情報公開請求書の写し9枚を    電子メールで事業者へ送ったことが判明し,市は11月10日に「個人情報の漏えいに関するお詫び    と御報告」として市ホームページでの公表を行っている。 (2) 本件請求対象文書について  当審査会において諮問庁より提出された証拠物件を確認したところ,本件において請求の対象となっている文書は匿名者が市長の自宅に送付した封書であり,その後処分庁が収受したものである。この封書には,以下三種類の文書が含まれていた。   ・匿名者が市長に宛てて書いた文書(以下「文書A」という。) ・一般的にメールを送信する際に使用されている@送信相手方の社名・所属・氏名,A本文,B送信者の署名という構成で作成されているものの,送受信の日時や送信先及び送信元のメールアドレスの記載はない文書。(以下「文書B」という。)   ・調布市内の居宅にかかる建築計画概要書の写し(以下「文書C」という。) (3)  本条例第12条に定める「公開請求のあった日」について  審査請求人は,上記3(2)アのとおり主張していることから,本条例第12条の解釈について検討する。 ア 本条例第12条は「前条各項の決定は,公開請求があった日から14日以内にしなければならない。」と定めており,決定までの期間は「公開請求のあった日」を基準に算定される。 イ 本条例第6条第1項では,市政情報の公開の請求方法等を定めており,同項第2号では電子情報処理組織を使用した方法を認めている。また,調布市長が管理する市政情報の公開等に関する規則(以下「本規則」という。)第3条第2項においては,条例第6条第2項に定める方法についてその要件を定めている。  さらに,電子情報処理組織を使用した方法による申請については,本規則第3条第3項において「前項に規定する方法により行われた公開請求は,同項に規定する電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に市長に到達したものとみなす。」と規定されている。 ウ 本件請求は,上記2のとおり,東京電子自治体共同運営サービスを通じて行われている。東京電子自治体共同運営サービスは,本規則第3条第2項に定める必要な事項を満たしていることから本条例第6条第2項に定める方法と認めることができる。このことから,本件請求は「電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に市長に到達したもの」とみなされる。  以上により,本件請求において,本条例第12条に定める「公開請求のあった日」とは,東京電子自治体共同運営サービスを通じて公開請求がなされた令和4年1月7日と解され,同条の定める「公開請求のあった日」を本件請求書の収受処理を行った令和4年2月21日とした処分庁の解釈は誤りであり,本件処分は同条に定める期限を超過するものである。 エ しかしながら,この点を理由に本件処分が取り消された場合,その効果は決定の内容に影響を及ぼすものではなく,本件処分以前の請求状態に戻す効果があるに過ぎない。仮に処分が取り消された場合,処分庁は本条例第11条に基づく決定等の処分を改めて行うこととなるが,これは本条例第12条に定める期限をさらに超過させることとなり,迅速な情報公開という観点から情報公開制度の趣旨がかえって損なわれる結果となることから,この点は本件処分の取消し事由にはならないと解される。 (4) 部分公開の範囲について   ア 文書Bの本条例第7条第2号ア及びイの適用について  審査請求人は,上記3(2)イ(ア)のとおり主張していることから,本条例第7条第2号ア及びイの適用について検討する。 (ア) 本条例では,個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から,個人のプライバシーを最大限に保護するため,「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別することができることとなる」情報を非公開情報として規定している(本条例第7条第2号)。一方,同号イでは,「当該個人が国家公務員,独立行政法人等の役員及び職員並びに地方公務員である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」は,非公開情報から除外するものと規定している。さらに,情報公開事務の手引き(令和2年度版)(以下「手引き」という。)によると,「当該情報がその職務の遂行に係る情報である」とは「公務員等が行政機関又はその補助機関として,その担当する職務を遂行する場合におけるその情報」としている。  また,公務員等の氏名の公開又は非公開の判断については手引きにおいて記載があり,『公務員等の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の氏名等については,「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」の規定(本条例第7条第2号ア)により公開又は非公開の判断を行う。』ものとされている。 (イ) 審査請求人が,文書Bにおいて公開されるべきであると主張している情報は,本文中の人物の職及び氏名並びに署名欄に書かれた人物の職及び氏名(以下「職及び氏名の情報」という。)である。まず,氏名に該当する情報は,当然ながら,本条例第7条第2号に定める「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別することができることとなる」情報であるということができる。また,職に該当する情報は,本件処分では組織名が開示されていることから,同条同号に定める「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は他の情報と照合することにより識別することができることとなる」情報であるということができる。    以上のことから,一部公開の範囲を検討するためには,文書Bにおける職及び氏名の情報が本条例第7条第2号ア及びイに該当するかを判断する必要がある。 (ウ) 市が作成しかつ市の使用するメールシステムによって送信したメールが同メールシステム等において保有されていた場合,職員が業務において作成したものであることは当然に確認できるものであり,同条同号イに定める「職務の遂行に係る情報」に該当し,その中に記載される「公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」は公開されるべきものである。しかしながら,当審査会が審議において文書Bを確認したところ,上記5(2)のとおり,文書Bは一般的にメールを送信する際に使用されている文章構成で作成されているものの,送受信の日時や送信先及び送信元のメールアドレスの記載はなく,また,メールシステムの類から出力,印刷されたような様態ではない文書であった。  このような文書Bの様態や文書Bが市が外部から文書を取得する通常の経路とは異なる経路により取得されたものであることを勘案すると,文書Bにおける職及び氏名の情報が本条例第7条第2号ア及びイに該当するかを判断するためには,さらに,文書Bの内容が「職務の遂行に係る情報」であるかを判断する必要があるが,これを判断するためには,文書Bと処分庁の保有するメール等の記録を対照し同一性を確認する等の方法により,市の職員が作成しかつ送信したものであることを客観的に確認することを要する。 (エ) 市の職員が作成しかつ送信したものであることを客観的に確認するためには,文書Bと処分庁の保有するメール等の記録を対照し同一性を確認する方法が考えられるが,処分庁の説明によると,市の使用しているメールシステム等を探索したが,同一内容のメール等の記録は保有していなかったとのことであった。  また,弁明書における「市長に宛てた個人情報の流出を指摘する手紙(文書)に添付されたこのメールは,市長の自宅に届いた郵便物で,元々,市が保有していた文書ではなく,市から送信したと思われるメールの写しではあるが,職務上作成した文書かどうかの確証がなく,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとは判断できない」との記述については,処分庁の説明によると,この一文は文章全体として「当該文書は市から送信したメールのような体裁を持ったものではあるが,市において同一内容のメール等の記録を保有していなかったことから真に市が送信したものであるかを確認することができず,当該文書に書かれた情報がその職務の遂行に係る情報であるとは判断できない」という趣旨である,とのことであった。  そのほかに,これらを覆すに足りる特段の事情もないことから,処分庁は,本件請求時に,文書Bの内容を市の職員が作成しかつ送信されたものであることを客観的に確認することができなかったことは是認される。 (オ) 以上のことから,文書Bの内容が「職務の遂行に係る情報」であると断定することができない以上,文書Bにおいて相手先として書かれた人物並びに署名欄に書かれた人物の氏名の情報は「公務員等の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の氏名等」ということもできないことから,「氏名等」にかかる情報について条例第7条第2号アを適用することもできない。   イ 文書Cの本条例第8条に基づく部分公開について    審査請求人は,文書Cに含まれる図面や寸法等について前記3(2)イ(イ)のとおり主張していることから,部分公開の範囲について検討する。 (ア) 建築計画概要書は,周辺との紛争防止や違反建築を未然に防ぐことを目的とした書類で,建築主,設計者,施工者,敷地状況のほか,配置図といった情報が記載されており,建築基準法第93条の2に基づき,請求があった場合は閲覧に供するものである。 (イ) 他方,前記5(2)のとおり,文書Cは匿名者から市長の自宅に送付された封書に含まれたものであり,市が閲覧に供しているものではない。また,文書Cにおける建築主の氏名及び住所の情報が本条例第7条第2号に該当し非公開であることについては争いのないところである。 (ウ) 文書Cに含まれる図面や寸法等の情報は,本条例第7条第2号に規定する「特定の個人が識別され」る情報に該当するということはできない。さらに,これらの情報が同条同号に規定する「他の情報と照合することにより識別することができることとなる」情報に該当するかを判断するためには,閲覧に供されている建築計画概要書と照合が可能か否を検討する必要がある。文書Cと同一性のある建築計画概要書を探索しようとした場合,市が閲覧に供している建築計画概要書と照合することになるが,本件が調布市内で発生した東京外かく環状道路工事を起因とする地表面陥没事故を発端とする内容であって市内の特定地区にかかる事案であることを鑑みると,該当可能性のある地区は限定されており,この地区の建築計画概要書を閲覧し文書Cに記載されている図面や寸法等と照合することで,文書Cと同一性のある建築計画概要書の特定することは可能である。 (エ) 以上により,文書Cに記載された図面や寸法等の情報を公開した場合,前記のとおり,文書Cと同一性のある建築計画概要書を特定することが可能であり,これにより当該建築計画概要書に記載された個人が識別され得ることから,文書Cに記載された図面や寸法等の情報は本条例第7条第2号に規定する「他の情報と照合することにより識別することができることとなる」情報であると考えられる。よって,処分庁が文書Cに記載された図面や寸法等を非公開としたことは条例第8条に反するものではない。 (5) その他    その他,審査請求人は,るる主張しているが,当審査会の判断に影響を及ぼすものではない。 (6) 結論    よって,「1 審査会の結論」のとおり判断する。 (7) 市政情報公開手続に関する付言  本条例に基づく市政情報公開請求手続きにおいて,請求のあった日というのは開示までの期間や請求の対象となる市政情報の有無の判断において,非常に重要な事項である。また,市政情報公開手続きにおける請求文書の適時判断という観点からも,市政情報公開請求がなされた場合には,補正の期間を除き,速やかに受付がなされるべきであり,請求の対象となる文書の有無やそれが市政情報に該当するのかどうかの検討は,受付後,条例第12条に定める期間の中で行われるべきものである。  本件において本条例第12条に定める期限を大きく超過したことは,市政への信頼を裏切るものである。今後,市民の信頼回復に努め,条例他関係例規に定める適正な事務を徹底することを求める。 6 当審査会の処理経過   当審査会は,本件諮問について以下のように審査を行った。 年月日 処理経過 令和4年11月14日 審査庁から提出された本件諮問書等を収受  令和6年 5月15日 情報公開審査会(令和6年度第1回) 本条例第24条の規定による審査請求人の口頭での意見陳述    同年10月 2日 情報公開審査会(令和6年度第4回) 審査  令和7年 1月29日 情報公開審査会(令和6年度第5回) 審査    同年 3月24日 情報公開審査会(令和6年度第6回) 審査 7 調布市情報公開審査会委員 職名 氏名 備考 会長 草川 健 弁護士 副会長 井上 寛 弁護士 委員 稲益 和子 弁護士 委員 佐藤 惠子 市民