5-1 福祉にフィットしない方たちの次の選択肢を考えるワーキング 報告書 1 目的   既存の福祉サービスに合わず行き場がなく安心できる居場所がない障害のある方を対象に,地域での支援の在り方や新たな地域資源について協議し,アイデアを創出する。   障害特性,当事者本人の意向,触法など様々な理由で就労継続支援B型など福祉的就労が合わず企業就労も難しいような,いわゆる狭間の障害当事者を対象に日中活動等の次の選択肢を検討する。 2 ワーキングにおいて取り組む主な内容について   様々な分野の先駆的活動者やワーキングメンバーから意見を集め,福祉に合わない障害当事者の現状と課題を確認する。昨年度ワーキングで新たな社会資源としてあがった「ソーシャルファーム」や「コミュニティカフェ」等をキーワードに調布における支援体制について精査していく。 3 ワーキンググループメンバー(敬称略) 座長 丸山 晃 (立教大学 コミュニティ福祉研究所 研究員)     佐藤 裕香(調布市社会福祉協議会 調布市こころの健康支援センター)     和泉 怜実(調布市社会福祉協議会 調布市子ども・若者総合支援事業 ここあ)     矢辺 良子(調布保護司会)     雨下 美香(調布心身障害児・者親の会)     大澤 宏章(羽ば5-1 福祉にフィットしない方たちの次の選択肢を考えるワーキング 報告書 1 目的   既存の福祉サービスに合わず行き場がなく安心できる居場所がない障害のある方を対象に,地域での支援の在り方や新たな地域資源について協議し,アイデアを創出する。   障害特性,当事者本人の意向,触法など様々な理由で就労継続支援B型など福祉的就労が合わず企業就労も難しいような,いわゆる狭間の障害当事者を対象に日中活動等の次の選択肢を検討する。 2 ワーキングにおいて取り組む主な内容について   様々な分野の先駆的活動者やワーキングメンバーから意見を集め,福祉に合わない障害当事者の現状と課題を確認する。昨年度ワーキングで新たな社会資源としてあがった「ソーシャルファーム」や「コミュニティカフェ」等をキーワードに調布における支援体制について精査していく。 3 ワーキンググループメンバー(敬称略) 座長 丸山 晃 (立教大学 コミュニティ福祉研究所 研究員)     佐藤 裕香(調布市社会福祉協議会 調布市こころの健康支援センター)     和泉 怜実(調布市社会福祉協議会 調布市子ども・若者総合支援事業 ここあ)     矢辺 良子(調布保護司会)     雨下 美香(調布心身障害児・者親の会)     大澤 宏章(羽ばたく会めじろ作業所 施設長)     伊藤 巧 (調布市社会福祉事業団 ワークライフカレッジすとっく) 4 今年度の検討経過  第1回ワーキング (開 催 日)令和6年6月14日(金) 14時から16時 (開催場所)ちょうふだぞう活動室 (出 席 者)委員7人 事務局7人 (内  容)今年度のワーキングの方向性について生活・就労体験の検討・実施・振り返りとすることを共有。また実際に体験する利用者についても併せて検討した。 (主な意見) ◎生活体験の場について ・社会体験する機会が足りていない。特に年齢を重ねるほど機会は減っている。 ・すとっくの利用を通して社会体験を重ねることができるが,内容によって参加率に波があることが課題である。 ・すとっくの講習会の参加率の波について,講習会の名前や内容に楽しみを織り込む等,工夫することで参加率の向上を図れないだろうか。人気のある講習会の内容と参加率が低い講習会の内容を混ぜても良いと思う。講習会を授業と呼び学校に通っているイメージにしてはどうか。 ・家事等の生活訓練においての参加率について,一つの方法だけでなく,様々な選択肢を提案し,その人に合うものを探すことが重要ではないか。また,アイロンかけが苦手な方にしわの付きにくい素材の衣服を勧めることや,洗濯を畳むことが苦手な方にハンガーでの収納を提案する等,苦手なことを行わずとも解決する方法の視点も重要と意見が挙がった。 ・無印良品や地域のスポーツジム等,地域貢献に前向きな民間サービスに協力を仰ぐ。整理収納やコーディネートのアドバイスや市の体育館もできると良い。 ・神社やお寺等の宗教関連にも協力を仰ぎ,清掃体験を行うとお互いのニーズを満たせるのではないか。 ・トランプやゲームの得点係等,支援者の意図しないところでの楽しみややりがいを感じるケースが多々ある。 (まとめ) ・既存のものも含め,生活面と余暇面を中心としたプログラムを作成,実践し,今後のワーキングにて報告していく。体験する人については委員から推薦してもらい希望がない場合は事務局で選定する。 ・就労についても同様に体験できる人とプログラムの検討をする。 ・すとっく開所後,現状の活動報告を行う。  第2回ワーキング (開 催 日)令和6年8月27日(火) 14時から16時 (開催場所)ちょうふだぞう活動室 (出 席 者)委員7人 事務局7人 (内  容)生活体験,就労体験について進捗状況を共有。また実際に体験する内容,対象者についてもあわせて検討した。 (主な意見) ◎生活体験について  ※前回のワーキングにて検討した,洋服のトータルコーディネート体験と教会の清掃体  験。すとっくの実践報告について話し合いを行った。 ・市内企業に協力をお願いした洋服のトータルコーディネート体験や教会での清掃体験の参加者は確定しつつあるが,あと数名候補者を検討していく必要がある。 ・市内企業に協力をお願いした洋服のトータルコーディネート体験については見学希望を募り,体験したくなった場合の当日参加枠があるとよいのではないか。 ・神社,教会の掃除体験をすとっくのプログラムに取り入れ,すとっく利用者に参加を促してみてはどうか。 ・少しでも,お金をもらえるシステムがあれば参加者を募りやすいと思う。 ・トータルコーディネート体験は第二回目の開催を想定し,今回の体験の様子を動画に収めていれば,次回参加者を募る際に有効であると思われる。 ◎就労体験について ・MNH(市内でソーシャルビジネスを行う企業ですとっくで作業を請け負っている)は,様々な事業を行っているため,体験者によって異なる内容の体験を提供できるのではないか。しかし利用者に提示する際には参加しやすいよう大枠の内容や例があった方が良い。金銭が出る場合,どの体験でいくら出るかどうかも提示する必要がある。 ・体験を通して結果的に就労に繋がればお互いのニーズを満たせるのではないか。 ・体験者として保護観察中で障害があるかどうかグレーな方を保護司から紹介してもらうのはどうか。 (まとめ) ・次回ワーキングは洋服のトータルコーディネート体験が終了した後の12月に変更。   体験内容や今後についての振り返りを行う。 ・就労体験については,関心を寄せてくれる市内企業が2か所あり,事務局と仲介してくれた委員とともに訪問し,ワーキングの内容説明と体験について相談する予定。  第3回ワーキング (開 催 日)令和6年12月20日(金) 16時から18時 (開催場所)ちょうふだぞう活動室 (出 席 者)委員7人 事務局6人 (内 容) 生活体験,就労体験について進捗状況を共有。 すとっくの実践報告も報告。 (主な意見) ◎生活体験について ・無印良品とのトータルコーディネート体験。 ちょうふだぞう,こころの健康支援センター,ここあの利用者から1名ずつ計3名が参加。調布市総合福祉センターの1室にて無印良品の衣類を陳列。衣類については事前に体験者の体形や好み等を無印良品に伝え,それらに当てはまるものを中心に持参してもらった。接客は通常営業時と大きく変わらない応対を心掛けてくれた。個別の特性により上着のみ試着した参加者もいたが,2パターンほどトータルコーディネートを組んで試着を行った参加者もおり,和やかな雰囲気で体験は終了。 利用者からは「ファッションに興味を持てました」や「聞きたかったことを聞けて良かった」等,ポジティブな感想が多く,満足度は高い印象。 実施後の振り返りにて,次回は開店前や開店直後等のお客様が少ない時間帯に店舗で実施できないか協議した。より実際の場面に近い形で体験出来るのではないかという考えとなった。(複合施設内の店舗のため,開店前の店舗の使用可否は別途要確認) ・サレジオ教会の清掃体験 すとっくのプログラムにて実施。1時間ほどの落ち葉掃きを行った。神父より教会の概要の説明があり,パイプオルガンによるクリスマスソングも試聴した。今後もすとっくのプログラムの一環として継続予定。また他機関と合同で同様のプログラムを検討したい。 ・すとっく実践報告 事業概要,4月からのプログラム実施回数や参加人数について報告を行った。また併せて施設見学も行った。 ◎就労体験について ・MNH 2人の利用者が体験予定。1人目は週3日で現在体験中。体験期間は1ヶ月を予定。食品を扱うレーン作業が主な業務。2人目は週1回で1月初旬より体験開始予定。 ・田村産業 体験予定であった方が就労したため実施できず。 (まとめ) ・次回のワーキングでは無印良品の体験内容について,他の候補を協議予定。 ・就労体験についてはMNHでの今後の継続方法について協議を行う予定。  第4回ワーキング (開 催 日)令和7年1月22日(水) 14時から16時 (開催場所)ちょうふだぞう活動室 (出 席 者)委員7人 事務局8人 (内 容) 生活体験,就労体験について進捗状況を共有。 すとっくの実践報告も報告。 (主な意見) ◎就労体験について ・MNH  ここあの利用者1名,こころの健康支援センター利用者1名の計2名が参加。内1名は体験終了済,もう一名は体験中。内容としては工場での製造作業,事務作業が主。 体験者の感想として楽しかった,達成感を感じた等,ポジティブな感想が多かった。 しかし受け入れ態勢が整っているため,とても働きやすい環境であったが故に就労の練習にならない部分があったとのこと。 ・田村産業  体験候補者が体験前に就職したため体験中止となる。ガソリンスタンド内のカフェ営業や清掃作業の予定であった。今後も連携を風化させず培いたい。 ・調布市障害者就労体験事業奨励金によって,今後,就労体験は企業には市より謝礼を出すことができる制度がある。 ◎振り返り ・生活体験  無印良品,サレジオ教会の体験実施までの時系列や連携フローについて振り返り,共有。  無印良品,サレジオ教会共に今後も継続的に企画を実施予定。サレジオ教会については,すとっくのプログラムとして継続。 ・就労体験  MNH,田村産業の体験実施までの時系列や連携フローについて振り返り,共有。  2社共に今後も継続的に企画を実施予定。 企業の自立支援協議会に対しての理解が難しく工夫が必要。 夜勤の就労体験や超短時間の雇用について様々なニーズが考えられる。 ■到達点 各委員へのヒアリングから抽出した課題として,生活関連の体験を成育歴の中で獲得する機会がなかった方への支援,就労を目指したが不安が大きく一歩を踏み出せない方への支援が必要であることを確認した。今年度は具体的なアプローチとして【生活体験】【就労体験】について,福祉サービスや支援の枠で検討するのではなく,地域の企業との連携する形で選択肢を用意。対象となる方とその支援者にご協力いただき,それぞれの体験を実施した。 【生活体験】では無印良品調布パルコ店と参加者3名の協力のもと,同社の商品を借りてトータルコーディネートの体験を実施した。「似合う服装」を同社店員から客観的に見立ててもらい,支援者や他の参加者から総評をいただく企画であった。参加者のもつ雰囲気を崩さずに魅力を引き立たせるコーディネートは,参加者および支援者から大変好評であった。だれかと一緒に服を選ぶという経験を経て,服に興味を持てなかった方も選ぶ時のポイントやコツを熱心に質問し,自分を魅力的に見せる服に興味を持てたという感想が聞かれた。 【就労体験】では,市内企業の株式会社MNHと田村産業有限会社の協力のもと,2名の方が就労体験をする企画を行った。参加者からは働くイメージがつき出来上がった製品が世に流通するという達成感・責任感を感じられたという振り返りがあった。 第4回ワーキングの中で,各体験の成果を確認。【生活体験】においては今年度開所した【ワークライフカレッジすとっく】と共同し,今後も【無印良品】と連携し,生活に関して様々な体験を実施していく。【就労体験】においては,体験できる場を提供いただける企業との連携を維持しつつ,企業・福祉の相互理解の促進と地域企業の開拓が必要となることを確認した。委員から単一の事業所で実施するには限界があるので就労に関わる支援機関のネットワーク機能が必要との提言があった。今後はワーキングで関係した有志のメンバーにより既存の就労支援ネットワーク会議(調布市就労支援実務者会議)との協力を視野に,新たに調布市内企業との連携のあり方や就労体験・雇用の場の創出を図っていく。