令和6年9月25日条例第29号    調布市障害者の多様な意思疎通に関する条例  人と人とが意思疎通を図り,相互に思いや考えを伝え,理解を深め合うことは,全ての人に保障されるべき基本的な権利です。  しかしながら,現状では障害者にとってその権利への理解や保障は十分であるとはいえません。  一人一人様々である障害の特性に応じて,障害者が意思疎通のための手段を自ら選択できる機会を確保し,又は適切な意思疎通における配慮,支援等を受けることで,円滑なコミュニケーションを図ることができます。  私たちは,障害の特性に応じた多様な意思疎通のための手段,配慮,支援等が,社会において広く理解され,障害者の意思疎通を図る権利が保障されるとともに,障害の有無にかかわらず誰もが相互に豊かなコミュニケーションでつながることができる共生社会の充実を目指し,この条例を制定します。 (目的) 第1条  この条例は,障害の特性に応じた多様な意思疎通のための手段,配慮,支援等に対する理解の促進及び普及に関する基本理念を定めるとともに,市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにし,市の施策を総合的に推進するための基本的な事項を定めることにより,障害者が安心して生活することができる共生社会の充実に寄与することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 (1) 障害者 身体障害,知的障害,精神障害,発達障害,高次脳機能障害,失語症その他の心身の機能の障害又は難病等の疾病(以下「障害」という。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (2) 意思疎通手段 言語(音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。)による意思疎通を補助し,又は代替するものであって,手話通訳,要約筆記及び筆談等の文字表記,代筆・代読,点字,音声,触手話,指文字,指点字,絵図等の視覚的表現,平易な表現,身振り,情報通信技術を用いた機器又はソフトウェアその他の障害者の円滑な意思疎通に資する手段をいう。 (3) 意思疎通支援者 意思疎通手段又は障害の特性に応じた専門的な配慮,支援等により障害者の円滑な意思疎通を支援する者をいう。 (4) 市民 市内に在住し,若しくは在勤し,又は市内の学校に在学する者その他市内で活動する者をいう。 (5) 事業者 市内で事業活動を行うものをいう。 (基本理念) 第3条 障害の特性に応じた多様な意思疎通のための手段,配慮,支援等に対する理解の促進及び普及は,次の各号に掲げる基本理念の下に行われなければならない。 (1) 障害の特性に応じた多様な意思疎通のための手段,配慮,支援等は,障害の有無にかかわらず相互に人格及び個性を尊重し合うことのできる共生社会の充実のために,障害者と意思疎通支援者との間だけでなく,社会において広く理解されることが必要であること。 (2) 障害の特性に応じた意思疎通手段の選択の機会が確保されることは,障害者の基本的な権利として最大限尊重される必要があること。 (3) 障害者の社会参加のためには,生活のあらゆる場面で障害の特性に応じた意思疎通手段を利用することができる環境の整備が必要であること。 (4) 障害者の円滑な意思疎通のためには,障害の特性に応じた適切な情報の取得及び利用への支援が必要であること。 (市の責務) 第4条 市は,基本理念にのっとり,国,東京都,市民,事業者その他関係団体と連携を図り,障害者が円滑に意思疎通をすることができる環境を整備するために必要な施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。 (市民の役割) 第5条 市民は,基本理念に対する理解を深めるとともに,市の施策に協力し,共生社会の充実に寄与するよう努めるものとする。 (事業者の役割) 第6条 事業者は,基本理念に対する理解を深め,市の施策に協力するとともに,障害者が円滑な意思疎通を図ることができる暮らしやすい環境を整備し,共生社会の充実に寄与するよう努めるものとする。 (施策の推進) 第7条 市は,次の各号に掲げる施策の推進に努めるものとする。 (1) 障害の特性に応じた多様な意思疎通のための手段,配慮,支援等に対する理解の促進及び普及のための啓発活動を行うこと。 (2) 障害者がその特性に応じて必要な意思疎通手段を選択し,及び利用しやすい環境を整備すること。 (3) 関係機関と連携し,障害の特性に応じた多様な意思疎通手段による支援を行う者を養成し,及び確保するとともに,処遇の改善に資する取組を行うこと。 (4) 意思疎通支援者が行う障害の特性に応じた意思疎通における適切な配慮,支援等に係る専門性の向上に資する取組を行うこと。 (5) 災害その他の非常事態において,障害者がその特性に応じた意思疎通手段を利用し,又は適切な配慮,支援等を受け,必要な情報を迅速かつ的確に取得し,円滑に意思疎通を図ることができるよう,関係機関と連携して,必要な取組を行うこと。 (6) 障害者がその特性に応じた意思疎通手段を利用し,又は適切な配慮,支援等を受けることにより,市政に関する情報を取得し,及びその意見を表明することができるよう,必要な取組を行うこと。 (7) 前各号に掲げるもののほか,障害者が安心して日常生活及び社会生活を営むために必要な分野において,円滑な意思疎通を図ることができるよう,必要な取組を行うこと。 2 市は,前項各号に掲げる施策を推進するに当たり,障害者その他の関係者の意見を聴くよう努めるものとする。 (財政上の措置) 第8条 市は,障害の特性に応じた多様な意思疎通のための手段,配慮,支援等に関する施策を推進するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (委任) 第9条 この条例の施行について必要な事項は,別に定める。 附 則  この条例は,公布の日から施行する。